自己回帰(読み)じこかいき(その他表記)auto-regression

日本大百科全書(ニッポニカ) 「自己回帰」の意味・わかりやすい解説

自己回帰
じこかいき
auto-regression

ある変数時系列において、その現在値が過去の値に依存して決まる状態をいう。たとえば、人々の消費活動は個々人あるいは個々の家計のこれまでの消費生活に左右される面が強いが、そのとき、ある特定個人(あるいは家計)の現在の消費額はその個人(家計)の過去の値に依存して決まることになる。この状態において、t時点のその消費額をCtと置くと、時系列C1, C2, C3,……, Ct,……は自己回帰過程にあるといわれる。

 一般に、Xtに関する時系列が基本的に一時点前のその変数の値に依存して決まるという自己回帰過程にあるとき、その関係を数式で表現すると、
  Xta0a1Xt-1ut
と書くことができる。ここでa0a1は変数Xの一時点間の相互の関連を具体的に示す係数であり、utは一時点前の値だけによっては系統的に説明できない不規則的な変動部分を表す確率変数である。このような自己回帰は、自己回帰過程のなかでもっとも簡単なものであり、1階の自己回帰過程とよばれる。これに対して一般のk階の自己回帰過程は次式(自己回帰モデル)によって与えられる。

  Xta0a1Xt-1a2Xt-2+……
    +akXt-kut
 このような自己回帰モデルにおいては、確率変数utが時点間で相互に独立に変動するものであっても、utと説明変数Xt-1, Xt-2,……との独立性は存在しなくなる。したがって、このようなモデルについては、通常最小二乗法を適用することによっては係数a0, a1,……に対して統計的に望ましい性質をもった推定値が得られないという問題が生ずる。

高島 忠]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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