航空機乗組員(読み)こうくうきのりくみいん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「航空機乗組員」の意味・わかりやすい解説

航空機乗組員
こうくうきのりくみいん

航空機に乗り組んで航空業務を行う者をいう(航空法69条)。操縦士パイロット)、航空士、航空機関士、航空通信士に分けられ、一般に運航乗務員(コックピットクルー)という。広義には客室乗務員を含む。また両者をあわせて乗員(クルー)という場合もある。「航空機の操縦」と操縦以外の「発動機及び機体の取扱」「無線設備の操作」「航空機の位置及び針路の測定並びに航法上の資料の算出」の業務と資格がある(航空法65条・66条)。

 航空従事者技能証明によって、資格別にその業務範囲が定められている(航空法28条)。航空機乗組員の技能証明には、4種の操縦士のほかに一~二等航空士、航空機関士、航空通信士、一~二等航空整備士、一~二等航空運航整備士、航空工場整備士がある。航空機乗組員は航空身体検査証明のほか、必要のある場合、計器飛行証明、操縦教育証明、航空英語能力証明を取得しなければならない。

 航空機乗組員は安全運航サービスと快適な機内サービスのため作業しており、国際民間航空機関(ICAO(イカオ))の規定、日本の航空法や各社の運航規程をはじめ、一部は労使協定などのなかに制限や制約が織り込まれている。とくに、時差のある24時間変則勤務をしており、健康管理については、乗務前の飲酒の制限、薬品の使用制限、注射の制限などから、潜水についても制限をつけている。また航空法には明確になっていない部分の勤務についての制限を、各社とも飛行時間、勤務時間、離着陸回数、路線、経験や編成などにより決めている。航空機乗組員は特殊な業務や勤務に対し手当や福利厚生面で保障されている。機長の乗務手当の約7割相当の手当が副操縦士に支給され、また客室乗務員へは機長の約2割相当の乗務手当が支給されている。また外国人パイロットの賃金と労働条件は、求人需給・市場によって変動している。

[松下正弘]

『運輸省航空局監修、住田正二編『航空従事者への道』新訂2版(1981・成山堂書店)』『運輸省航空局監修『パイロット・整備士への道』(1989・成山堂書店)』『全日本空輸編『エアラインハンドブックQ&A100――航空界の基礎知識』(1995・ぎょうせい)』

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改訂新版 世界大百科事典 「航空機乗組員」の意味・わかりやすい解説

航空機乗組員 (こうくうきのりくみいん)

航空機に乗り組んで一定の職務に従事する要員で,乗員ともいう。日本の航空法では直接運航に携わる要員(運航乗員)のみを乗組員として規定しているが,一般に民間輸送機では客室乗員や貨物係まで含めていうことが多い。大型輸送機の場合,かつては運航乗員は正・副操縦士(操縦士のことをパイロットpilotと呼ぶことも多い),機関士,航法士,通信士の5人編成であったが,装備の進歩によって操縦士が通信業務を兼ねられるようになり,次いで高精度自動航法機器の採用によって航法士も不要となった。今日では自動化は機関士の業務にもおよび,超大型機でも2人の操縦士だけで運航される時代を迎えた。将来は搭載機器のいっそうの自動化と航空交通管制システムの発達によってその操縦士の業務もさらに軽減していくものと予想されている。日本の航空法に定められている民間航空機乗員の資格は,定期運送用,上級事業用,事業用,自家用の各操縦士,1,2等の各航法士,1,2,3等の各通信士および航空機関士の10種であるが,航法士と通信士は事実上もはや独立職種ではなく操縦士が併有する資格となっている。なお,定期運送用および上級事業用操縦士の免許の有効期間は6ヵ月で,そのつど操縦技能テストと身体検査を受けて更新しなければならない。また,計器飛行や操縦教育を行う場合にもそのそれぞれについて資格を取得しなければならない。

 一方,輸送機の客室乗組員はパーサー(事務長)とスチュワードおよびスチュワーデスに分かれ,ほぼ旅客30~40人に対して1人の割りで乗り組むが,いずれもサービス業務のみならず非常の際の避難指揮,誘導にも責任を負っている。なお,軍用機では操縦士のほか偵察員,銃・爆撃手,電子・音響機器要員,戦闘指揮官など多種類の乗員がある。
機長
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百科事典マイペディア 「航空機乗組員」の意味・わかりやすい解説

航空機乗組員【こうくうきのりくみいん】

航空機に乗り組んで一定の職務を遂行する要員。航空法では航空従事者として操縦士(事業用,自家用),航空士(1,2等),航空機関士,航空通信士,航空整備士(1〜3等),航空工場整備士の10種を規定している。いずれも運輸大臣の行う試験に合格,技能証明を得なければならないが,このうち整備士以外は航空免状を得て航空機に乗り組むことから,ふつう運航機乗組員と呼ばれている。しかし通信士は特殊な通信を必要とする地域の飛行以外は,通常操縦士が兼務,長距離の航法に必要な航空士は,航法装備の近代化で乗り組ませない傾向が強い。ほかに旅客機ではスチュワーデス,パーサーなどの客室乗務員が乗り組むが,これは航空法所定のものではない。2名以上乗組みの航空機には,その航行を指揮,統制し,全責任を負う機長をおく。通常,先任操縦士を当て,航行,保安,緊急の避難などについて,乗客を含めた機内の命令権をもっているが,特別の場合のほか司法権はないとされている。
→関連項目パイロット

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