日本大百科全書(ニッポニカ) 「航空従事者」の意味・わかりやすい解説
航空従事者
こうくうじゅうじしゃ
操縦士(パイロット)、航空士、航空機関士、航空通信士および航空整備士をいう。これらの航空従事者になるには、航空業務に必要な知識および能力を判定する国家試験に合格し、技能証明書を取得しなければならない。また、航空機に乗り組んで運航を行う者は、国の定めた身体検査基準に適合していることを証明する航空身体検査証明書も取得しなければならない。
操縦士は、航空機に乗り組んで操縦を行う。自家用操縦士、事業用操縦士、定期運送用操縦士の3種類の資格があり、資格に応じて業務範囲が決められている。また、操縦士の技能証明は、航空機の種類と等級により限定される。航空機の種類には、飛行機、回転翼航空機、滑空機(グライダー)、飛行船の四つがある。
技能証明の限定は、航空機の種類および等級について次のとおりである。
〔1〕飛行機については、(1)陸上単発ピストン機、(2)陸上単発タービン機、(3)陸上多発ピストン機、(4)陸上多発タービン機、(5)水上単発ピストン機、(6)水上単発タービン機、(7)水上多発ピストン機、(8)水上多発タービン機、以上の8等級がある。
〔2〕回転翼航空機については、〔1〕の飛行機の等級と同様の8等級がある。
〔3〕滑空機については、(1)曳航(えいこう)装置なしの動力滑空機、(2)曳航装置付きの動力滑空機、(3)上級滑空機、(4)中級滑空機、以上の四つがある。
〔4〕飛行船につては、〔1〕の飛行機の等級と同様の8等級がある。
航空士は、航空機に乗り組んで、航空機の位置および針路の測定ならびに航法上の資料の算出を行う。業務内容の程度により一等航空士と二等航空士に分かれる。
航空機関士は、航空機に乗り組んで、発動機および操縦装置以外の機体の取扱いを行う。
航空通信士は、航空機に乗り組んで無線設備の通信操作および技術操作等を行う。
航空整備士は、航空機の整備、または改造した航空機が安全基準に適合するかの確認を行う。資格は5種類に分かれ、整備する航空機の用途、重量および業務範囲により、一等航空整備士、二等航空整備士、一等航空運航整備士、二等航空運航整備士と、改造した航空機の確認をも行う航空工場整備士がある。
航空通信士を除いては、技能証明には、航空機の種類や等級もしくは型式についての限定があり、限定された航空機についてのみ資格を行使できる。現在では慣性航法装置が航空士にとってかわり、また操縦士が航空通信士を兼務するのが普通である。
[青木享起・仲村宸一郎]