日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
船舶バラスト水規制管理条約
せんぱくばらすとすいきせいかんりじょうやく
船舶を安定させるために用いられているバラスト水の浄化処理について定めた条約。正式名称は「2004年の船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約(International Convention for the control and management of Ships' Ballast Water and Sediments, 2004)」である。2004年2月に国際海事機関(IMO)によって採択され、2017年9月8日に発効した。2019年2月時点で締約国はカナダ、韓国、ドイツ、日本、フランス、リベリア、ロシアなど80か国である。
その背景として、バラスト水に含まれる水生生物(プランクトン、細菌、海藻、魚介類の幼生など)が本来の生息地以外で放出されることにより引き起こされる生態系の破壊や人の健康被害が、1980年代末から顕在化していたことがある。外来種問題の一形態でもある。
規制内容としては、(1)基準値を超えるバラスト水の排出の禁止、処理装置の設置、(2)船舶ごとに、バラスト水管理計画の作成・実施、バラスト水記録簿の常備、(3)旗国(船籍国)による、船舶の定期的検査、国際証書の発給、(4)寄港国による、国際証書・記録簿の確認、バラスト水の分析、違反船舶の抑留などが定められており、既存船も対象とされる。その浄化手法には、濾過(ろか)、薬品処理、オゾン処理、紫外線照射などがある。
国内では、2014年(平成26)10月10日の加入書の寄託、2017年5月31日の公布を経て、9月8日に発効した。
[磯崎博司 2021年10月20日]