色ふ(読み)イロウ

デジタル大辞泉 「色ふ」の意味・読み・例文・類語

いろ・う〔いろふ〕【色ふ/彩ふ/艶ふ】

[動ハ四]
美しいいろどりをしている。映える。
「いかばかり思ひおくとも見えざりし露に―・へる撫子なでしこの花」〈和泉式部集・下〉
色が美しく交じる。
「かざしの花の色々は秋の草に異なるけぢめ分かれで、何事にも目のみ紛ひ―・ふ」〈・若菜下〉
[動ハ下二]
美しくいろどる。
大領おほくび端袖はたそで―・へたる直垂ひたたれに」〈平家・一一〉
金や宝石などをちりばめて飾る。
「くさぐさのうるはしき瑠璃を―・へて作れり」〈竹取
文章などを飾る。潤色する。
「詞を―・へて云ふ程に綺語と云ふぞ」〈四河入海一九

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精選版 日本国語大辞典 「色ふ」の意味・読み・例文・類語

いろ・ういろふ【色・艷】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ハ行四段活用 〙
    1. 美しい色合になる。色彩が映える。
      1. [初出の実例]「いかばかり思ひおくとも見えざりし露に色へる撫子の花」(出典:和泉式部集(11C中)下)
    2. 色が美しく入り交じる。色彩が交錯する。
      1. [初出の実例]「山藍に摺れる竹の節は松の緑に見えまがひ、かざしの色々は秋の草に異なるけぢめ分かれで、何事にも目のみまがひいろふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    3. よく見えるようにする。つくろう。
      1. [初出の実例]「身の振舞にいろはねば、人目をかざる事もなし」(出典:一遍上人語録(1763)上)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙
    1. 色どる。彩色する。配色する。
      1. [初出の実例]「文(あや)、綺(イロヘ)画けるに同じ」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))
    2. 金属や宝石などを鏤(ちりば)め飾る。
      1. [初出の実例]「この皮ぎぬ入れたる箱を見れば、くさぐさのうるはしき瑠璃を色えて作れり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    3. ( から転じて ) 文章や演技など技巧に工夫を凝らす。潤色する。
      1. [初出の実例]「もろこしに白楽天と申しける人は、七そぢの巻物作りて、ことばをいろへ、たとひをとりて、人の心をすすめ給へりなど聞こえ給も」(出典:今鏡(1170)一〇)

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