苦しい時の神頼み(読み)クルシイトキノカミダノミ

デジタル大辞泉 「苦しい時の神頼み」の意味・読み・例文・類語

くるしいとき神頼かみだの

ふだんは信仰心を持たない人が、病気災難で困ったときだけ神仏に祈って助けを求めようとすること。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「苦しい時の神頼み」の解説

苦しい時の神頼み

苦しくて自分の力ではどうにもならなくなると、人は神仏に頼り、何とか救いを求めようとする。転じて、日頃疎遠な人や義理を欠いている人に、苦しい時だけ助けを求めることのたとえ。

[使用例] 小児は毛細気管支炎という難病にかかり、とかくする中、危篤有様に陥りければ、苦しき時の神頼みとやら、夫婦は愚にかえりて、風の日も雨の日も厭うことなく〈略〉筑土八幡宮に参詣して、愛児の病気を救わせ給えと祈り、平生嗜めたる食物娯楽をさえに断ちたるに[福田英子*妾の半生涯|1904]

[使用例] 苦しい時の神頼み、――私はついぞ神信心をしたことなぞはなかったのですが、その時ふいと思い出して、観音様へお参りをしました。そして「ナオミ居所が一時も早く知れますように、明日にも帰ってくれますように」と、真心めて祈りました[谷崎潤一郎*痴人の愛|1924]

[解説] 日頃は信仰とは縁遠い者でも、本当に窮地におちいり、自力でどうにもならなくなると、何とか助けてもらおうとして神仏にすがるのは、人情でしょう。ことわざは、やや皮肉な視線を向けながら、同時に、人間苦しい時にはそうなるもの、しかたがないものとして容認しています。
 安土桃山時代から「せつない時の神頼み」の形でよく使われた古いことわざで、「苦しい時」は、「せつない時」のほか「かなわぬ時」「ずつ(術)ない時」などともいわれます。今日では「苦しい時」が多用されていますが、どれが正しいということではなく、方言を含め、当事者にとって最も実感のこもった表現であれば、どれを使ってもよいでしょう。また、「神頼み」は「神たたき」とされることもありますが、意味は変わりません。

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