草・艸(読み)くさ

精選版 日本国語大辞典 「草・艸」の意味・読み・例文・類語

くさ【草・艸】

[1] 〘名〙
① 植物で地上に現われている部分が柔軟で、木質にならないものの総称。草本(そうほん)
万葉(8C後)五・八八六「たまほこの 道の隈廻(くまみ)に 久佐(クサ)(た)折り 柴取り敷きて 床じもの うち臥(こ)い伏して」
② ①の中で特殊なもの。
(イ) 何の役にも立たない雑草。はぐさ。
蜻蛉(974頃)中「つれづれなるままに、くさどもつくろはせなどせしに」
謡曲・隅田川(1432頃)「草茫々としてただ、しるしばかりの浅茅が原と、なるこそあはれなりけれ」
(ロ) 屋根や壁の材料に用いる萱(かや)や藁(わら)など。「壁草」「草葺」などと熟して用いることが多い。また、「草の庵(いおり)」と熟合して、粗末な家の意となることがある。
(ハ) まぐさ。かいば
※万葉(8C後)七・一二九一「此の岡に草(くさ)刈る童児(わらは)なしか苅りそね ありつつも君が来まさむ御馬草(みまくさ)にせむ」
※枕(10C終)一七七「牛つなぎて、くさなど飼はするこそいとにくけれ」
(ニ) 堕胎(だたい)に使う植物。
日葡辞書(1603‐04)「Cusauo(クサヲ) フルウ〈訳〉女性がある草を用いて堕胎する」
(ホ) 食用にする菜。
※御湯殿上日記‐文明一二年(1480)正月二六日「つうけん寺殿よりくさ、あをのりまいる」
③ (草に伏してひそみ敵をうかがうところから) 戦場で、山野に忍んで敵情をさぐること。また、その者。忍物見(しのびものみ)
※結城氏新法度(1556)二七条「草夜わさ、かやう之義は、あくとう其外走たつもの一筋ある物にて候」 〔北条五代記(1641)〕
④ 「くさいろ(草色)」の略。
能楽小道具の一つ。竹に挟んでかついで出る草。「蘆刈」「木賊」「敦盛」などには青いものを用い、「雲雀山」「項羽」などには花を用いる。
⑥ 「しちぐさ(質草)」の略。
※雑俳・柳多留‐九(1774)「能草を干したとしゃれる暑気見廻」
⑦ 陰毛。
※雑俳・塵手水(1822)「草しげり・もふ母おやと入らぬ風呂」
[2] 〘接頭〙 名詞について、本格的でないものの意を表わす。「草なすび」「草かげろう」「草競馬」「草野球」「草芝居」「草相撲」など。

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