菅田庵(かんでんあん)(読み)かんでんあん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「菅田庵(かんでんあん)」の意味・わかりやすい解説

菅田庵(かんでんあん)
かんでんあん

松江藩の家老職にあった有沢家の菅田村(すがたむら)山荘(島根県松江市菅田町)にある茶室。「すがたあん」とも読む。1792年(寛政4)藩主松平不昧(ふまい)の構想と指導によって建てられた。茅葺(かやぶ)き入母屋造(いりもやづくり)の前面に杮(こけら)葺きの庇(ひさし)を付し、妻に不昧筆の円形陶板を掲げている。内部は一畳台目(だいめ)中板入り、床(とこ)は中板の部分に袖壁(そでかべ)をつけ、床柱も落掛(おとしがけ)も省略して塗り回した洞床(ほらどこ)の形式である。しかし下部は一段高く框(かまち)式にみせ、左側壁に墨蹟窓(ぼくせきまど)をあけている。中板を入れ中柱を立てながら、炉は台目切(ぎり)とせず隅炉としているのは、通例の構えにこだわらない自由なくふうとして注目される。客座には連子窓(れんじまど)と円形の下地窓(したじまど)があけられ、明るく開放的な気分が漂っている。水屋を隔てて南西に広間向月亭(こうげつてい)が接続している。茅葺き寄棟造の二方杮葺きの庇を巡らした田舎家(いなかや)風な外観を示す。主室は四畳半で、正面に床と台目の点前座(てまえざ)を並べ、半間入側簀子縁(すのこえん)が折れ巡っているので、入側と座敷を続けると、七畳半台目以上に広げられる。

中村昌生

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