ヒノキ、マキなど比較的水に強い木材を長さ24センチメートル前後、幅6~9センチメートル、厚さ数ミリメートルの短冊形の薄板に挽(ひ)き割り、屋根木舞(こまい)の上に竹釘(くぎ)を用いて葺き重ねていく屋根葺き方法。この薄板を杮板(こけらいた)または、へぎ板(いた)、木羽板(こばいた)などとよび、一つの断面に重ねた杮板の枚数の多いものほど高級工事とされる。広義の板葺きに属するが、長大な板を平葺きにする普通の板葺きとは異なる。杮葺きは高級邸宅の屋根に用いられ、桂(かつら)離宮殿舎はその典型である。しかし防火上の見地から現在これを一般建築に用いることはできない。なお、杮葺きに似たものに栩(とち)葺きがあり、これは厚さ9ミリメートル以上の板を用いる。また江戸時代には杮葺きと栩葺きの中間の厚さの板を用いた木賊(とくさ)葺きとよぶものもあった。
葺き土を用いる瓦葺きにおいて、裏板の上に葺き重ねる同種の薄板を杮板とよぶこともある。ただしこの場合の杮板は、屋根葺きに使うものより厚さがさらに薄く、2ミリメートル程度のものである。
[山田幸一]
なお杮葺きは、2020年(令和2)「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」17件中の1件(檜皮葺(ひわだぶき)・杮葺)として、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。
[編集部 2022年1月21日]
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