菊綴(読み)きくとじ

精選版 日本国語大辞典 「菊綴」の意味・読み・例文・類語

きく‐とじ‥とぢ【菊綴】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 直垂(ひたたれ)水干(すいかん)、長絹(ちょうけん)素襖(すおう)などの縫い目にほころびを防ぐために、とじ付けた紐(ひも)組紐の先を乱して円く菊形にしたことによる名称。乱さずに結んだままのを「結び菊綴」という。時代の下降とともに装飾となった。
    1. 菊綴<b>①</b>〈伴大納言絵詞〉
      菊綴伴大納言絵詞
    2. [初出の実例]「摂政随身袴如恒、但番長中臣季近以紫菊閉」(出典山槐記‐仁安二年(1167)三月二三日)
    3. 「弓袋の菊とぢ二つ可付也」(出典:今川大双紙(15C前)弓法之次第之事)
  3. 菊の花を利用して作った食品の名。白、黄、紅など、色とりどりの菊の花びらをむしって桶に入れ、塩漬けにしたものを切り、さらに、美濃紙(みのがみ)に包んで赤みそに漬けたもの。〔料理山海郷(1750)〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「菊綴」の意味・わかりやすい解説

菊綴
きくとじ

和服の飾りの一種で,袖付けあるいは襟付けの縫合せ目のほころびを防ぐため,要所に組紐を通して結び,紐の余りをさばいて菊の花の形に似せたもの。激しい動作を予想して着用する衣服水干 (すいかん) ,直垂 (ひたたれ) ,素襖 (すおう) などに施される。中世以降,水干や直垂が準礼装になると,菊綴も形式化して大総 (おおぶさ) となり装飾化した。

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世界大百科事典(旧版)内の菊綴の言及

【水干】より

…また狩衣は裾を袴の中に着込めず,外に出すが,水干の裾は袴の中に込める。水干のほころびやすい袖付,奥袖と端袖(はたそで)の縫目,身ごろと登(のぼり)(衽(おくみ))の縫目の要所に組ひもをとおして結び,結びあまりをほぐして総(ふさ)として飾り,これを菊綴(きくとじ)と呼んでいる。水干には烏帽子(えぼし)をかぶり,裾口を緒で締めてすぼめるようにした括(くく)り袴をはくが,股立の合せ目のところと膝の上の縫目に左右それぞれ2個ずつ菊綴をつけた水干袴と呼ばれるものも用いられた。…

※「菊綴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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