萎・痿(読み)なえる

精選版 日本国語大辞典 「萎・痿」の意味・読み・例文・類語

な・える【萎・痿】

〘自ア下一(ヤ下一)〙 な・ゆ 〘自ヤ下二〙
① 力が抜けてなよなよとなる。気力がなくなってぐったりとする。また、手足などが麻痺(まひ)して、感覚がなくなる。
※今鏡(1170)六「若宮とておはしましし、幼くよりなへさせ給て」
衣服などが、長く着たために柔らかくなる。糊(のり)などが落ちて張りがなくなり、くたくたとなる。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「はかなき単衣のなへたるを著たるに」
③ 植物がしおれる。しなびる。
※前田本枕(10C終)七六「葵・かづらもうちなえて見ゆ」
④ たわむ。
山家集(12C後)下「月見れば風に桜の枝なえて花よと告ぐる心地こそすれ」
気持がしぼむ。意気込みが消えていく。
※黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉七「先生の温かい強い言葉は、萎(ナ)え切った敬二の心身に酒よりも濃い血を注入する様で」
[補注](1)活用がヤ行下二段である古い確例には「観智院本名義抄」の「 ナユ、萎 ナユ」がある。
(2)①の意は、手足が自由にならない意の、ハ行下二段動詞「なふ」との意味の近似から後世は混同された面がある。→なうなえ

なえ【萎・痿】

〘名〙 (動詞「なえる(萎)」の連用形名詞化) 力が抜けて自由がきかなくなること。麻痺すること。また、そのような人。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※弟(1973)〈古井由吉〉「萎(ナ)えに似た感覚を膝頭からふくらはぎへひろげる」

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