な・う なふ
〘接尾〙
[一] (四段型活用)
名詞や
形容詞の
語幹、また
動詞の
語基などに付いて、その
行為をする意の動詞をつくる。「商
(あき)なう」「敵
(あた)なう」「甘
(あま)なう」「うべなう」「荷なう」「幣
(まい)なう」など。
※
続日本紀‐天平神護元年(765)八月一日・宣命「罪
奈比(ナヒ)給ひきらひ給はむ」
[二] (下二段型活用) (一)の場合とよく似ているが、その
実例は少なく、かつ、同じ語で四段、下二段両様に活用するものもあり、下二段の方が使役的な
意味が強いともいう。「罪なう」「ともなう」など。
※
万葉(8C後)一九・四一八九「ますらをを とも奈倍
(ナヘ)立てて 叔羅川 なづさひ泝
(のぼ)り」
なう なふ
〘助動〙 (活用は「なは・◯・なふ・なへ・なへ・◯」。動詞の
未然形に付く) 上代東国方言。打消の意を表わす。…ない。
※万葉(8C後)一四・三四二六「
会津嶺の国をさ遠みあは奈波
(ナハ)ば偲ひにせもと紐結ばさね」
※万葉(8C後)一四・三四八三「昼解けば解け奈敝(ナヘ)紐のわが背なにあひ寄るとかも夜解けやすけ」
[
補注]打消の
助動詞「ず」の未然形「な」に継続の助動詞「ふ」が付いてできたものと考えられ、室町時代以来、関東方言として現われる助動詞「ない」の祖形かといわれる。
な・う なふ
〘自ハ下二〙 足または手に
故障があって、その
運用が自由でなくなる。
※
唐物語(12C中)下「
あしなへたるものの、はふはふゐざりつつ」
[補注](1)「あしなえ」「てなえ」などの「なえ」に対する
本来の動詞形は「なへぐ(蹇)」である。
(2)「なえる(萎)①」と意味が近いため混同されやすいが、「なう」が
手足の
不自由であるのをいうのに対し、「なえる」は力が抜け、または麻痺して動かなくなるのをいい、本来は
語義も
かなづかいも別のものであったと考えられる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「なう」の意味・読み・例文・類語
なう[助動]
[助動][なは|○|なふ|なへ(のへ)|なヘ|○]《上代東国方言》活用語の未然形に付く。打消しを表す。…ない。
「まかなしみ寝れば言に出さ寝なへば心の緒ろに乗りてかなしも」〈万・三四六六〉
[補説]語源については、打消しの助動詞「ず」の未然形の古い形「な」に接尾語「ふ」の付いたものとも、同じく連体形に接尾語「あふ」の付いたものともいう。
な・う[接尾]
[接尾]《動詞五(四)段型活用》名詞、形容詞の語幹などに付いて動詞をつくり、その行為をするという意を表す。「あき―・う(商う)」「に―・う(荷なう)」「あま―・う(甘なう)」
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