デジタル大辞泉 「なう」の意味・読み・例文・類語 なう[助動] [助動][なは|○|なふ|なへ(のへ)|なヘ|○]《上代東国方言》活用語の未然形に付く。打消しを表す。…ない。「まかなしみ寝ぬれば言ことに出づさ寝なへば心の緒ろに乗りてかなしも」〈万・三四六六〉[補説]語源については、打消しの助動詞「ず」の未然形の古い形「な」に接尾語「ふ」の付いたものとも、同じく連体形に接尾語「あふ」の付いたものともいう。 な・う[接尾] [接尾]《動詞五(四)段型活用》名詞、形容詞の語幹などに付いて動詞をつくり、その行為をするという意を表す。「あき―・う(商う)」「に―・う(荷なう)」「あま―・う(甘なう)」 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「なう」の意味・読み・例文・類語 な・うなふ 〘 接尾語 〙[ 一 ] ( 四段型活用 ) 名詞や形容詞の語幹、また動詞の語基などに付いて、その行為をする意の動詞をつくる。「商(あき)なう」「敵(あた)なう」「甘(あま)なう」「うべなう」「荷なう」「幣(まい)なう」など。[初出の実例]「罪奈比(ナヒ)給ひきらひ給はむ」(出典:続日本紀‐天平神護元年(765)八月一日・宣命)[ 二 ] ( 下二段型活用 ) [ 一 ]の場合とよく似ているが、その実例は少なく、かつ、同じ語で四段、下二段両様に活用するものもあり、下二段の方が使役的な意味が強いともいう。「罪なう」「ともなう」など。[初出の実例]「ますらをを とも奈倍(ナヘ)立てて 叔羅川 なづさひ泝(のぼ)り」(出典:万葉集(8C後)一九・四一八九) なうなふ 〘 助動詞 〙 ( 活用は「なは・◯・なふ・なへ・なへ・◯」。動詞の未然形に付く ) 上代東国方言。打消の意を表わす。…ない。[初出の実例]「会津嶺の国をさ遠みあは奈波(ナハ)ば偲ひにせもと紐結ばさね」(出典:万葉集(8C後)一四・三四二六)「昼解けば解け奈敝(ナヘ)紐のわが背なにあひ寄るとかも夜解けやすけ」(出典:万葉集(8C後)一四・三四八三)なうの補助注記打消の助動詞「ず」の未然形「な」に継続の助動詞「ふ」が付いてできたものと考えられ、室町時代以来、関東方言として現われる助動詞「ない」の祖形かといわれる。 な・うなふ 〘 自動詞 ハ行下二段活用 〙 足または手に故障があって、その運用が自由でなくなる。[初出の実例]「あしなへたるものの、はふはふゐざりつつ」(出典:唐物語(12C中)下)なうの補助注記( 1 )「あしなえ」「てなえ」などの「なえ」に対する本来の動詞形は「なへぐ(蹇)」である。( 2 )「なえる(萎)①」と意味が近いため混同されやすいが、「なう」が手足の不自由であるのをいうのに対し、「なえる」は力が抜け、または麻痺して動かなくなるのをいい、本来は語義もかなづかいも別のものであったと考えられる。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例