出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
本宮に対する新宮,親神に対する御子神をいう。八幡宮における若宮八幡(仁徳天皇),春日社の春日若宮(天押雲根命)などがその代表的な例である。若宮をまつるに至った経緯を各地に残る若宮社の縁起類からうかがうと,巫女の託宣によるものが多い。若宮の成立の背後には神をまつる巫女と母子神信仰との深いかかわりが存在していた。また巫女の託宣により示された若宮は非業の死をとげたために人々に災いをもたらし,たたるものであった。このたたる霊魂を,より上位のかつ強力な神の統制下におくことによって,そのたたりを防ごうとしたところに若宮の成立した根拠があった。若宮八幡を仁徳天皇とする説明は,八幡神を応神天皇とする説の成立以後のもので,若宮のあらあらしいたたる神としての性格が忘れられ薄れてからのものである。また若宮の〈若〉は若い子どもの意にあわせて,正月の若水の例のような霊力をもつものという意味をもっていた。このような若宮をめぐる信仰の根底には母子神信仰,御子神信仰,それを支えた巫女の活動,非業の死をとげた者がたたりをなすと信じられた御霊信仰,また有力な神は人間の社会の有力者と同様にこれに従う従者としての眷属神,御子神を多くもつとする観念と,その観念をてこにみずからのまつる神の威力をひろめ,在地でそれまで信仰されていた神を下位に位置づけようと努力した神職集団の活動などが,複雑にからみあいながら存在していた。
執筆者:西垣 晴次
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福岡県北部、鞍手郡(くらてぐん)にあった旧町名(若宮町(まち))。現在は宮若(みやわか)市の西部を占める。旧若宮町は1943年(昭和18)町制施行。1951年山口、中(なか)の2村、1955年吉川(よしかわ)村と、笠松(かさまつ)村の一部を合併。2006年(平成18)宮田(みやた)町と合併、市制施行して宮若市となった。旧若宮町域の南西部は三郡山地(さんぐんさんち)東斜面の山地が広く分布、遠賀(おんが)川支流の犬鳴川(いぬなきがわ)が北東流して沖積低地(若宮盆地)を形成、北端に九州自動車道若宮インターチェンジがある。中心集落の福丸(ふくまる)は小京都の異名をもつ旧市場町でバス交通の中心。主産業は農林業で、米のほか、野菜、ブドウ、タケノコ、木材などを産し、酪農も盛んである。見どころとして国指定史跡の竹原古墳(たけはらこふん)(装飾古墳)、若宮八幡(はちまん)宮、力丸(りきまる)ダムなどがあり、脇田温泉(わきたおんせん)は筑豊(ちくほう)の奥座敷といわれ、一帯は太宰府(だざいふ)県立自然公園に含まれる。
[石黒正紀]
若宮社、若宮神社ともいう。基本的には本宮の摂・末社として主祭神の御子(みこ)を神に祀(まつ)る社(やしろ)をいうが、ときに本宮に対してその主神の分霊を勧請(かんじょう)した社を若宮といい、また非業の死を遂げた怨霊(おんりょう)を慰め鎮めるために祀った社を若宮と称する例も少なくない。若宮八幡(はちまん)は仁徳(にんとく)天皇、春日(かすが)若宮は天押雲根命(あめのおしくもねのみこと)、大神(おおみわ)神社の若宮は太田田根子命(おおたたねこのみこと)、梅宮神社の若宮は橘諸兄(たちばなのもろえ)と、いずれも主祭神の御子を祀るが、鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)はもと源頼義(よりよし)が石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)を由比郷(ゆいごう)に祀った鶴岡若宮であり、鹿児島市有村(ありむら)町の若宮神社は島津氏が鶴岡八幡を勧請したものである。また鹿児島県出水(いずみ)市野田町の若宮神社は、文武に優れた武将で藩主に謀殺された島津忠兼(ただかね)の祟(たた)りを鎮めるための社であり、愛媛県宇和島(うわじま)市の和霊(われい)神社も藩主に殺された功臣を祀る社で、同県内ではこの種の社を若宮社という。
[薗田 稔]
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…若一王子(にやくいちおうじ)ともいう。《長秋記》長承3年(1134)の記事で〈若宮(わかみや)〉とあるのが本来の呼称であろうが,平安末期の《梁塵秘抄》には〈若王子〉と見える。若王子は京都の白川の禅林寺の北に同じころ勧請され,〈白川熊野〉ともよばれたが,鎌倉・室町幕府からは所領を寄進され,京都郊外の花の名所でもあったし,全国の具足屋(甲冑の職人,商人)の信仰を集め,若王寺とも記された。…
…その場合,別宮は神領とともに本社で管理された。(3)そのほかに今宮,若宮など,さらに神幸祭の頓宮,お旅所,また旧社地に奉斎してある社のことを別宮と称しているように,幾種にか分類される。【鎌田 純一】。…
※「若宮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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