古井由吉(読み)フルイヨシキチ

デジタル大辞泉 「古井由吉」の意味・読み・例文・類語

ふるい‐よしきち〔ふるゐ‐〕【古井由吉】

[1937~2020]小説家東京の生まれ。立教大学ドイツ文学を講じたのち、文筆活動に入る。「内向の世代」の代表的作家。「杳子ようこ」で芥川賞受賞。他に「槿あさがお」「中山坂」「仮往生伝試文かりおうじょうでんしぶん」「白髪の唄」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「古井由吉」の意味・わかりやすい解説

古井由吉
ふるいよしきち
(1937―2020)

小説家。東京生まれ。東京大学独文科卒業。立教大学などでドイツ文学を講ずるかたわら、『円陣を組む女たち』(1970)、『男たちの円居(まどい)』(1970)などを書いて認められ、以後文筆に専念する。『杳子(ようこ)』(1970)で芥川(あくたがわ)賞を受賞。現代人の不安感覚を、精細かつ内面的に造型する方向で、『行隠(ゆきがく)れ』(1972)、『聖(ひじり)』(1976)などを刊行する。その後『栖(すみか)』(1979。日本文学大賞)、『椋鳥(むくどり)』(1980)などによって、幻想的内面志向は深められる。ほかに『山躁賦(さんそうふ)』(1982)、『槿(あさがお)』(1983。谷崎潤一郎賞)、『中山坂』(1986。川端康成文学賞)、『仮往生伝試文(かりおうじょうでんしぶん)』(1989。読売文学賞)、『楽天記』(1992)、『魂の日』(1993)、『陽気な夜まわり』(1994)があり、さらに『白髪(はくはつ)の唄(うた)』(1996。毎日芸術賞)、『夜明けの家』(1998)と続いた。なお、『東京物語考』(1984)がエッセイ集として刊行されている。

[金子昌夫]

『『古井由吉全エッセイ』全3巻(1980・作品社)』『『古井由吉作品』全7巻(1982~1983・河出書房新社)』『『仮往生伝試文』(1989・河出書房新社/講談社文芸文庫)』『『東京物語考』(1990・岩波書店/岩波同時代ライブラリー)』『『魂の日』(1993・福武書店)』『『小説家の帰還――古井由吉対談集』(1993・講談社)』『『陽気な夜まわり』(1994・講談社)』『『夜明けの家』(1998・講談社/講談社文芸文庫)』『『聖耳』(2000・講談社/講談社文芸文庫)』『『槿(あさがお)』(1983・福武書店/福武文庫/講談社文芸文庫)』『『楽天記』(1992・新潮社/新潮文庫)』『『白髪の唄』(1996・新潮社/新潮文庫)』『『木犀の日――古井由吉自選短篇集』(講談社文芸文庫)』『和田勉著『古井由吉論』(1999・おうふう)』

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百科事典マイペディア 「古井由吉」の意味・わかりやすい解説

古井由吉【ふるいよしきち】

小説家。東京生れ。東大大学院修士課程修了(独文専攻)。ブロッホムージルを研究,翻訳。《木曜日に》《円陣を組む女たち》などで注目される。金沢大学を経て,立教大学でドイツ語を教えていたが1970年に退職,本格的な作家生活に入る。同年の《杳子(ようこ)》で芥川賞受賞。《妻隠(つまごみ)》とともに男女の愛の物語のうちに内面にすくう世界への違和感を細密に描き,〈内向世代〉と称された。以後,《聖(ひじり)》,《栖(すみか)》(日本文学大賞),《槿(あさがお)》(谷崎潤一郎賞),《中山坂》(川端康成賞),《仮往生伝試文》など。精神の深部に分け入る描写に特徴があり,特に近年では既成の日本語文脈を破る独自な文体を試みている。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「古井由吉」の解説

古井由吉 ふるい-よしきち

1937- 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和12年11月19日生まれ。立大でドイツ語をおしえる。昭和45年作家生活にはいり,46年「杳子(ようこ)」で芥川賞。現代人の不安や狂気独得の文体でえがき「内向の世代」とよばれる。58年「槿(あさがお)」で谷崎潤一郎賞,平成2年「仮往生伝試文」で読売文学賞,9年「白髪の唄」で毎日芸術賞。ほかに「野川」など。東京出身。東大卒。

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