小説家。東京生まれ。東京大学独文科卒業。立教大学などでドイツ文学を講ずるかたわら、『円陣を組む女たち』(1970)、『男たちの円居(まどい)』(1970)などを書いて認められ、以後文筆に専念する。『杳子(ようこ)』(1970)で芥川(あくたがわ)賞を受賞。現代人の不安感覚を、精細かつ内面的に造型する方向で、『行隠(ゆきがく)れ』(1972)、『聖(ひじり)』(1976)などを刊行する。その後『栖(すみか)』(1979。日本文学大賞)、『椋鳥(むくどり)』(1980)などによって、幻想的内面志向は深められる。ほかに『山躁賦(さんそうふ)』(1982)、『槿(あさがお)』(1983。谷崎潤一郎賞)、『中山坂』(1986。川端康成文学賞)、『仮往生伝試文(かりおうじょうでんしぶん)』(1989。読売文学賞)、『楽天記』(1992)、『魂の日』(1993)、『陽気な夜まわり』(1994)があり、さらに『白髪(はくはつ)の唄(うた)』(1996。毎日芸術賞)、『夜明けの家』(1998)と続いた。なお、『東京物語考』(1984)がエッセイ集として刊行されている。
[金子昌夫]
『『古井由吉全エッセイ』全3巻(1980・作品社)』▽『『古井由吉作品』全7巻(1982~1983・河出書房新社)』▽『『仮往生伝試文』(1989・河出書房新社/講談社文芸文庫)』▽『『東京物語考』(1990・岩波書店/岩波同時代ライブラリー)』▽『『魂の日』(1993・福武書店)』▽『『小説家の帰還――古井由吉対談集』(1993・講談社)』▽『『陽気な夜まわり』(1994・講談社)』▽『『夜明けの家』(1998・講談社/講談社文芸文庫)』▽『『聖耳』(2000・講談社/講談社文芸文庫)』▽『『槿(あさがお)』(1983・福武書店/福武文庫/講談社文芸文庫)』▽『『楽天記』(1992・新潮社/新潮文庫)』▽『『白髪の唄』(1996・新潮社/新潮文庫)』▽『『木犀の日――古井由吉自選短篇集』(講談社文芸文庫)』▽『和田勉著『古井由吉論』(1999・おうふう)』
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