葉山(町)(読み)はやま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「葉山(町)」の意味・わかりやすい解説

葉山(町)
はやま

神奈川県南東部、三浦半島相模(さがみ)湾岸三浦郡にある町。1925年(大正14)町制施行。国道134号、逗葉(ずよう)新道が通じる。地形上は三浦半島をほぼ東西方向に走る大楠(おおくす)山、畠(はたけ)山・二子(ふたご)山両地塁山脈と下山(しもやま)川、森戸(もりと)川の両地溝低地からなり、夏涼・冬暖の湘南(しょうなん)型気候に恵まれている。古代には東海道から三浦半島東部(さらに房総半島)へ通じる交通の要路にあたっていた。1894年(明治27)一色(いっしき)海岸に葉山御用邸(1971年焼失、1981年再建)が設けられてからは、海岸地区を中心に京浜別荘地として開けた。御用邸付属邸跡地に開園した葉山しおさい公園には、葉山しおさい博物館があり昭和天皇が相模湾で採集した海洋生物の標本が展示されている。隣接して県立葉山公園がある。第二次世界大戦後は、別荘は団体や企業の保養所、京浜方面への通勤者の住宅にかわり、現在は京浜の住宅衛星都市の一つになっている。海岸は出入りが多く砂浜、磯浜(いそはま)の変化に富む景勝地をなし、遠浅の海は海水浴に適し、とくに森戸、一色、長者ヶ崎(ちょうじゃがさき)の海岸がにぎわう。ここの海は魚貝が多種・多量で好釣り場をなす。またわが国のヨットレースの発祥地としても知られ、鐙摺(あぶずり)にはヨットハーバーがあり、南の横須賀(よこすか)市境のかつての宝金山から大楠山にかけたゴルフ場を中心に国際交歓基地になっていて、1994年(平成6)には湘南国際村が開村している。森戸、長柄(ながえ)、山口などには中世初頭に三浦党の拠点となった城館跡があり、鐙摺城跡(旗立(はただて)山)はその戦闘拠点とされ、この付近で新第三紀の本州の造山運動を物語る「鐙摺の不整合」を観察できる。一色の森山神社の世計神事(よはかりしんじ)(豊凶と気候を占う)と湯花神楽(かぐら)は貴重な民俗行事。そのほか、神奈川県立近代美術館葉山館、山口蓬春(ほうしゅん)記念館などもある。面積17.04平方キロメートル、人口3万1665(2020)。

[浅香幸雄]

『『葉山町郷土史』(1975・葉山町)』


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