鐙摺(読み)アブミズリ

デジタル大辞泉 「鐙摺」の意味・読み・例文・類語

あぶみ‐ずり【××摺】

馬の脇腹の、が当たる部分。また、鐙が当たってできたたこ
よろい脛当すねあの内側下部。かこずり。
播磨革はりまがわなどで作った簡単な障泥あおり
馬の鐙がすれるほど、道幅の狭い箇所。あぶずり。

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精選版 日本国語大辞典 「鐙摺」の意味・読み・例文・類語

あぶみ‐ずり【鐙摺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 馬の横腹の前部で、鐙の当たる所。また、鐙が当たってできたたこ。あぶずり。〔十巻本和名抄(934頃)〕
  3. 近世武具のすね当てで、鉸具(かこ)の当たる部分。鐙のために摺れるのを防ぐために、内側下方の部分を切り欠いて、馬革を当てた。鉸具摺(かくずり)
  4. 泥障(あおり)の下方の鐙の当たる部分。近世は、泥障全体をもいう。播磨革(はりまがわ)などで作った簡単な泥障。
    1. [初出の実例]「武士の騎馬出立といふにも泥障さすべからず。但あぶみすりは苦しからずといふ事あり。泥障とは毛皮をいひ、鐙磨とは播磨革のまる作をいふよし註したれば、鐙磨といひしは今の板泥障といふ物の類にやといへり」(出典:和訓栞(1777‐1862)あぶみずり)
  5. 乗馬の鐙がすれるほど、左右に岩石などが迫った狭い道。あぶずり。転じて、多く地名ともなる。
    1. [初出の実例]「広綱、奉伴彼人〈略〉到于大多和五郎義久鐙摺宅云々」(出典吾妻鏡‐寿永元年(1182)一一月一〇日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鐙摺」の意味・わかりやすい解説

鐙摺
あぶずり

神奈川県三浦郡葉山町北部の一地区。逗子(ずし)市南部に接する。海岸沿いに国道134号が走る。海岸道は中世までは古東海道の一部であった。平安末期から三浦氏の一族、大多和義久(おおたわよしひさ)の別館があったが、1177年(治承1)伊豆の蛭ヶ小島(ひるがこじま)に配流中の源頼朝(よりとも)が訪ねたおり、近くの小山築城(現、鐙摺城跡)しようと検分したが、道が狭く急で、岩に鐙(あぶみ)が摺(す)れたので頼朝が「鐙摺」と命名したのが地名のおこりと伝える。ここの下の船溜(ふなだま)りはわが国近代ヨットの発祥地で、現在も大型のヨットハーバーがある。この付近から逗子市境にかけた一帯の基盤地層に、日本列島の生成史、すなわち第三紀の造山運動を物語る「鐙摺の不整合」が露出していることでも有名。

[浅香幸雄]

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世界大百科事典(旧版)内の鐙摺の言及

【葉山[町]】より

…企業の海の家,保養所も多く,近年はリゾートマンションが建ち並ぶ。逗子市に接する鐙摺(あぶずり)は日本のヨットレース発祥地として知られ,ヨットハーバーがあり釣船の基地としてもにぎわう。町の南部,横須賀市にまたがる丘陵部が開発され,湘南国際村が県の企画により生まれている。…

※「鐙摺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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