化学辞典 第2版 「蒸気密度の測定」の解説
蒸気密度の測定
ジョウキミツドノソクテイ
vapor density measurement
液体(または固体)の蒸気の密度を測定して,試料の分子量の近似値を求めることができる.理想気体の法則が適用できるものとすれば,物質量n(単位 mol),質量m(単位 g)の蒸気につき,
となる.圧力pを atm 単位,体積Vを L 単位で表し,気体定数
R = 0.082 L atm K-1 mol-1
を用いれば,
となり,温度T,圧力pにおける蒸気の密度(m/V)を測定することにより分子量Mが求められる.蒸気密度の測定法には古来から種々の方法が工夫されている.
(1)J.B.A. Dumas(デュマ)の方法:既知容積のガラス容器中に十分量の試料物質を入れ,その沸点以上の一定温度に温める.試料を全部蒸発させ,容器内部の空気を完全に蒸気で置換したのち,容器の口を閉じてひょう量する.最初の空気の入った容器の重量と,蒸気を満たしたときの重量の差から試料蒸気の重量が求まる.圧力は大気圧として,上式から分子量を決定できる.
(2)V. Meyer(マイヤー)の方法:下部に膨らんだ蒸発室を備え,上部にはガスビュレットに通じる側管を付したガラス管を垂直に立てて用いる.この管を,試料より20~30 ℃ 沸点の高い液体を入れたガラス製外とう管中に立て,この液体を沸騰させながら,内管の上部からひょう量ずみの試料を入れた薄肉のガラス球を投下する.ガラス球は壊れ,試料液体は瞬間的に蒸発し,蒸発した蒸気と同体積の空気が上部の側管から押し出されるから,その体積をガスビュレットで室温で測定する.蒸気自身の体積の測定は不要である.実験は簡単であり,学生実験で一般に広く用いられる方法である.また,実験装置の改良により,1000 ℃ 以上の高温での固体金属の蒸気密度の測定も可能である.
(3)そのほか,トリチェリー真空中に,試料を水銀柱の下部から送り込んで蒸発させ,水銀柱の降下を測定するJ.L. Gay-Lussac(ゲイ-リュサック)とR. Hoffmann(ホフマン)の方法もある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報