頭髪をそること。僧尼となるときに行う。薙はそる,切り除くの意。剃髪,落飾に同じ。〈かしらそり〉〈かしらおろし〉〈おぐしおろし〉などともいう。入道得度して僧尼となるには,煩悩を断ち切るため髪をそり落とし,仏弟子の生活に入るには,世俗の虚飾をさけるため身の飾りを落とす。落飾は王侯貴族が出家する場合にいう。また薙髪はとくに髻(もとどり)を切ることを指している。《今昔物語集》巻十九に〈道心堅ク発(おこり)ニケレバ,髻ヲ切テ法師ト成ニケリ,名ヲ寂照ト云フ〉(参河守大江定基出家語)などとあるのがそれである。インドではヒンドゥー教の行者が髪や髭をのばしほうだいにしているのに対し,仏教の僧尼は髪髭をそり落とした姿である。出家して僧尼となることを剃髪染衣(ぜんね)(剃髪し,色に染まった衣を身にまとう)という。このように僧は剃髪が本来の姿であるが,なかには蓬髪の僧もみられ,毛坊主(けぼうず)といわれるものもいた。得度の儀式でいったん剃髪しても,そのご髪をのばしている者が多いのが,現代の僧侶風俗である。
執筆者:伊藤 唯真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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