藁しべ長者(読み)わらしべちょうじゃ

改訂新版 世界大百科事典 「藁しべ長者」の意味・わかりやすい解説

藁しべ長者 (わらしべちょうじゃ)

昔話。ある男が1本わらしべを手にして旅をするうちに,次々と品物交換し,ついに長者になると語る本格昔話。幸福な結婚を語る話型と長者譚の2種類に大別される。結婚を語る場合は,霊験譚を内容にとり入れた妻まぎの説話として流布する。これは《今昔物語集》《宇治拾遺物語》《雑談(ぞうだん)集》にも収められて,仏教色の濃い話になっている。同様のものは,御伽草子の〈大悦物語〉にあって文芸的手法のもとに定着している。この昔話は,1本のわらしべを順次大根,みそ,刀,馬などに換えていくところに興味の中心を置いている。源流をインド古代説話に求める説もある。しかしわらのもつ信仰や神秘性に基づいて成立した昔話で,それはきわめて日本的である。わらはもともと歳神の招代(おぎしろ)として用いられ,現に,年中行事などには呪物として機能している。ヨーロッパでは“有利な交易”が語られるが関連性は認め難い。朝鮮には日本と同話型が存在する。
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百科事典マイペディア 「藁しべ長者」の意味・わかりやすい解説

藁しべ長者【わらしべちょうじゃ】

昔話。観音に願掛して1本の藁しべを授かった男が,アブ(トンボ,ハチ)を捕らえて藁しべにしばり,旅をするうちにこれを順次高価な物と交換,ついに長者になる昔話。《今昔物語集》《宇治拾遺物語》にもみえる観音霊験物語。
→関連項目長者伝説

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「藁しべ長者」の解説

藁しべ長者 わらしべちょうじゃ

「今昔物語集」「宇治拾遺物語」などの昔話の主人公
1本の藁からつぎつぎと,より価値のあるものに交換して長者となり,幸福にくらした。

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世界大百科事典(旧版)内の藁しべ長者の言及

【アブ(虻)】より

…また《続日本後紀》によれば,845年(承和12)5月に山城国綴喜・相楽両郡に大発生して,牛馬に甚大な害を与え,害虫のはなはだしいものであった。《今昔物語集》には貧しい若者がふととらえたアブを藁(わら)しべで結び,小枝の先につけて歩いているのを貴人の幼児が欲しがるのでコウジ3個と換え,次にのどの渇いた女性に与えて衣を受け,さらに馬,家屋敷としだいに価値の高いものと交換してついに長者となる〈藁しべ長者〉と呼ばれる系統の話をのせている。福運ある者は,藁しべやアブのようなまったく価値のない品をもっていても富み栄えることを意味した古い人生観の表現であろう。…

※「藁しべ長者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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