虚無への供物(読み)キョムヘノクモツ

デジタル大辞泉 「虚無への供物」の意味・読み・例文・類語

きょむへのくもつ【虚無への供物】

塔晶夫の筆名で書かれた、中井英夫長編小説。昭和37年(1962)、前半部分を第8回江戸川乱歩賞応募、最終候補作のひとつとなる。後半部分を書き足して、昭和39年(1964)に刊行。後に、中井英夫名義でも刊行されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「虚無への供物」の意味・わかりやすい解説

虚無への供物
きょむへのくもつ

中井英夫(ひでお)が塔晶夫(とうあきお)の名で発表した長編推理小説。1964年(昭和39)刊。二つの連続密室殺人事件が発生し、それを関係者たちがそれぞれ四つの解釈を施し、8種類のトリックを推理するという構成で、フィルポッツ、バン・ダイン、ノックスクリスティ、ディクスン・カー、小栗(おぐり)虫太郎などのトリックが縦横に引用されて推理趣味と洒落(しゃれ)にあふれている。読む側が内外の推理小説に通じていれば、それだけさらにおもしろく読める作品で、作者自身はアンチ・ミステリー、反推理小説とよんでいる。本格推理小説を逆手にとったユニークなパロディー題名バレリーの詩からとられている。

厚木 淳]

『『虚無への供物』(講談社文庫)』

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