中井英夫(ひでお)が塔晶夫(とうあきお)の名で発表した長編推理小説。1964年(昭和39)刊。二つの連続密室殺人事件が発生し、それを関係者たちがそれぞれ四つの解釈を施し、8種類のトリックを推理するという構成で、フィルポッツ、バン・ダイン、ノックス、クリスティ、ディクスン・カー、小栗(おぐり)虫太郎などのトリックが縦横に引用されて推理趣味と洒落(しゃれ)にあふれている。読む側が内外の推理小説に通じていれば、それだけさらにおもしろく読める作品で、作者自身はアンチ・ミステリー、反推理小説とよんでいる。本格推理小説を逆手にとったユニークなパロディー。題名はバレリーの詩からとられている。
[厚木 淳]
『『虚無への供物』(講談社文庫)』
貨幣 (名目) 賃金額を消費者物価指数でデフレートしたもので,基準時に比較した賃金の購買力を計測するために用いられる。こうしたとらえ方は,名目賃金の上昇が物価の上昇によって実質的には減価させられている...