ノックス(読み)のっくす(英語表記)John Knox

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノックス」の意味・わかりやすい解説

ノックス(John Knox)
のっくす
John Knox
(1513/1515―1572)

スコットランド宗教改革者。ハディングトン(エジンバラ東郊)郊外の農民の家に生まれる。セント・アンドリューズ大学卒業後は公証人となり、のちに聖職者となるが、信奉する宗教改革者ウィシャートGeorge Wishart(1513―1546)の火刑を契機に改革運動の指導者となる(1547)。フランス軍に捕らえられ、ガレー船で苦役に服しマリア崇拝を強制される(1547~1549)。釈放後はイングランドで宣教(1549~1554)、大陸に亡命してジュネーブで改革の現実を見聞カルバンと親交を結び師事する。亡命者の教会で責任を果たす間に、統治者への反乱を起こす正当性を確信し、抵抗権神授論にたつ。1559年、混乱した祖国に戻り、国民を激励して宗教改革運動を成功させた。翌1560年エジンバラのセント・ジャイルズ教会の牧師として、改革派教会の樹立に努力し、1561年、カトリック女王メアリー・スチュアートのミサ施行に反対した。『スコットランド宗教改革史』History of the Reformation in Scotlandなどの著作がある。

[川又志朗 2018年1月19日]



ノックス(Philander Chase Knox)
のっくす
Philander Chase Knox
(1853―1921)

アメリカ弁護士政治家。会社弁護士として著名であったが、マッキンリー、T・ルーズベルト両政府の司法長官(1901~1904)となり、トラスト訴訟で活躍し、商務労働省創設にも尽力した。連邦上院議員(1904~1909)を経てタフト政府の国務長官(1909~1913)に任命され、国務省機構改革を行い、中国ラテンアメリカで「ドル外交」を推進した。とくにその満州鉄道中立化案は有名。上院議員に再選され(1917~1921)、ベルサイユ条約に反対した。

[高橋 章]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノックス」の意味・わかりやすい解説

ノックス
Knox, John

[生]1514頃.イーストロージャンス,ハディングトン
[没]1572.11.24. エディンバラ
スコットランドにおける宗教改革の指導者,歴史家。ピューリタニズムの創始者の一人,長老主義の先駆者。ルター主義者ウィシャートとの親交によって宗教改革者となり,ウィシャート処刑後,セントアンドルーズ城の説教者となった (1547) 。フランス軍による陥落後,奴隷として 19ヵ月間捕われ,49年春釈放されてイギリスにおもむき,エドワード6世の宮廷牧師になった。メアリー1世即位後はほかの宗教改革者とともに大陸に逃れ,ジュネーブでカルバンの影響を受けた。帰国し,宗教戦争 (59~60) における改革派の勝利ののち,エディンバラで改革派教会の制度づくりに尽力した。彼の抵抗権神授論は改革派教会の支えとなった。「スコットランド信条」や「礼拝規則書」を議会で批准させ,宗教改革の基礎を築いた。主著『スコットランド宗教改革史』 History of the Reformation of Religion in the realm of Scotland (84) 。

ノックス
Knox, Philander Chase

[生]1853.5.6. ペンシルバニア,ブラウンズビル
[没]1921.10.12. ワシントンD.C.
アメリカの法律家,政治家。 1877~1901年ピッツバーグで法律家として活躍。 01年 W.マッキンレー大統領の司法長官に任命され,トラスト規制に活躍。 04年ペンシルバニアから連邦上院議員に選出され,09年 W.タフト大統領の国務長官となり,ラテンアメリカ,東アジア,西アジアにおいて「銃弾に代えるにドルをもってする」いわゆる「ドル外交」を展開し,アメリカ資本の本格的海外進出を推進した。これにより,特にドルと海兵隊によってカリブ海地域を支配する政策が着実に実行された。 17年再び連邦上院議員。国際連盟の強力な反対者として知られた。

ノックス
Knox, Henry

[生]1750.7.25. アメリカ,ボストン
[没]1806.10.25. アメリカ,メーン,トマストン
アメリカの軍人,政治家。初代の陸軍長官。ボストンで書籍商を営んでいたが,独立戦争に際し大陸軍に参加。 1775年冬,ニューヨークのタイコンデロガ要塞から大砲など多数の武器を運び出し,凍てついたハドソン川を渡河して雪のなかをボストンに帰還。この武器によって大陸軍の砲兵隊をつくり,みずから少将として指揮をとり,イギリス軍のボストン包囲を解いた。 G.ワシントンから麾下の将軍中最も有能で信頼のおける人物として信任されていた。 85年連合規約のもとで初代の陸軍総監となり,続いてワシントン政権下でも陸軍長官をつとめた。

ノックス
Knox, Ronald Arbuthnott

[生]1888.2.17. キブワース
[没]1957.4.24. メルス
イギリスのカトリック神学者。アングリカンの家庭に生れる。 1910年オックスフォード大学の研究員,12年学生指導司祭。 17年カトリックに改宗,26~39年まで同大学のカトリック指導司祭。旧新約聖書を独力で英訳 (新約,1945刊,旧約,49刊) 。社会評論家としても活躍し,ほかに自叙伝,探偵小説も著わしている。

ノックス
NOx

窒素酸化物 NOxの総称。大気汚染物質としての窒素酸化物をさすときに使われる用語。おもに自動車の排ガス中に含まれる一酸化窒素 (NO) と二酸化窒素 ( NO2 ) が問題とされ,特に NO2 は光化学スモッグの原因とされている。

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