フィルポッツ(英語表記)Eden Phillpotts

改訂新版 世界大百科事典 「フィルポッツ」の意味・わかりやすい解説

フィルポッツ
Eden Phillpotts
生没年:1862-1960

イギリスの小説家,劇作家インド生れ。両親はともにデボンシャーの出身。約250冊以上の著書のうち最も重要なのは,その大半を占めるデボンシャー,とくにダートムーアの自然と人情を写した長編小説群で,農夫たちの些細な行為にも十分な目を注ぎ,T.ハーディのウェセックス物としばしば比較される。このほか3年間連続上演の記録をもつ《農夫の妻》(1916初演)や《ジェーンの遺産》(1925初演),《駆落ち》(1928初演)などの劇作もある。また,《灰色の部屋》(1921)をはじめ,大胆な犯罪計画を冷静沈着に執行する犯人と名探偵との息詰まる対決を描き,巧妙に仕組まれたプロットで本格推理小説史上の傑作と目されている《赤毛のレドメーン家》(1922)や《闇からの声》(1925)など,実名ハリントンヘキスト筆名で,ミステリー探偵小説を約20冊残している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィルポッツ」の意味・わかりやすい解説

フィルポッツ
ふぃるぽっつ
Eden Phillpotts
(1862―1960)

イギリスの小説家、劇作家、詩人、推理作家。インドに生まれ、98歳で死去し、著作は250編に上る。ダートムア小説とよばれ、ハーディのウェセックス小説にも対比すべき多くの田園小説のほか、幻想小説、詩、随筆と幅広い活躍のあと、1921年、60歳になって怪奇推理小説『灰色の部屋』に手を染めた。推理小説の場合にはハリントン・ヘクストHarrington Hextの名も用いている。『赤毛のレドメイン家』(1922)、『闇(やみ)からの声』(1925)が推理小説の分野では世評が高い。英文学特有の落ち着いた展開のなかに、意外な謎(なぞ)や構成を秘めている。イギリス推理小説界の女王クリスティの、少女習作時代の師でもあった。

[梶 龍雄]

『橋本福夫訳『闇からの声』(創元推理文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィルポッツ」の意味・わかりやすい解説

フィルポッツ
Phillpotts, Eden

[生]1862.11.4. インド,マウントアブー
[没]1960.12.29. デボンシャー,ホニトン
イギリスの小説家,劇作家。『霧の子供たち』 Children of the Mist (1898) から『おぼろげに鏡に写して』 Through a Glass Darkly (1951) にいたる二十余編の小説は,南西部ダートムア地方の自然と人間を描いたもの。また『農夫の妻』 The Farmer's Wife (17) など数編の戯曲や,ハリントン・ヘクストの筆名で発表した『赤毛のレドメイン家』 The Red Redmaynes (22) などの探偵小説もある。

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