日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィルポッツ」の意味・わかりやすい解説
フィルポッツ
ふぃるぽっつ
Eden Phillpotts
(1862―1960)
イギリスの小説家、劇作家、詩人、推理作家。インドに生まれ、98歳で死去し、著作は250編に上る。ダートムア小説とよばれ、ハーディのウェセックス小説にも対比すべき多くの田園小説のほか、幻想小説、詩、随筆と幅広い活躍のあと、1921年、60歳になって怪奇推理小説『灰色の部屋』に手を染めた。推理小説の場合にはハリントン・ヘクストHarrington Hextの名も用いている。『赤毛のレドメイン家』(1922)、『闇(やみ)からの声』(1925)が推理小説の分野では世評が高い。英文学特有の落ち着いた展開のなかに、意外な謎(なぞ)や構成を秘めている。イギリス推理小説界の女王クリスティの、少女習作時代の師でもあった。
[梶 龍雄]
『橋本福夫訳『闇からの声』(創元推理文庫)』