日本大百科全書(ニッポニカ) 「蝦蟇鉄拐」の意味・わかりやすい解説
蝦蟇鉄拐
がまてっかい
蝦蟇仙人(せんにん)と鉄拐仙人の2人を主題にした中国道釈(どうしゃく)人物画の画題。蝦蟇仙人は劉海蟾(りゅうかいせん)といい、中国渤海(ぼっかい)の人。金王朝に仕えて大臣となったが、のち野に下り西安(せいあん)終南山にこもって仙術を学んだ。鉄拐仙人は姓を李(り)といい、若いとき道術を得た。いずれも道教に関係ある人物であるが、日本には室町時代初期に中国から請来(しょうらい)された元代の画家顔輝(がんき)の筆になる絹本着色の二幅の作品が京都知恩寺に所蔵され、唯一の確実な顔輝画として知られている。この図は、蝦蟇を使って妖術(ようじゅつ)を行ったという蝦蟇仙人と、自分の姿を空中に吐き出すという鉄拐仙人をそれぞれ各幅に描いたもので、このような奇怪な道教的仙人図は元代の趣向でもあった。日本では顔輝画の模本として画僧明兆(みんちょう)の筆になるもののほか、雪村(せっそん)の作品も有名である。
[永井信一]