室町末期の画僧。生没年不詳。16世紀初め常陸(茨城県)太田の戦国武将佐竹氏の一族の長子として生まれたが,家督を奪われて出家し,禅僧となり,法諱(ほうき)を周継といった。もっぱら画の修業に励み,別号を中居斎,舟居斎,鶴船と称した。会津,小田原,鎌倉など東北,関東の各地を遍歴するが,その間,会津の蘆名盛氏や小田原の北条氏康・氏政などの戦国大名,早雲寺開山の以天宗清(いてんそうせい),同2世の大室宗碩(だいしつそうせき),円覚寺第151世の景初周随などの知遇を得て,画人として大成していった。晩年は田村隆顕・清顕が支配した奥州田村(福島県)の三春に小庵を結び隠棲し,終生画筆をはなすことなく86歳余で没した。小庵は何度か建て替えられて,〈雪村庵〉の名でのこっている(郡山市西田町字雪村)。雪舟に私淑し,関東画壇の先人の画跡から多くを学び,宋元画や明画からも影響を受け,豊かな構想力を駆使して,独自の画風を開拓した。遺作は当時の画人としては異例に多く,約150点が知られ,山水,花鳥,草虫,禽獣,蔬菜,故事,隠逸,肖像,道釈人物など多方面にわたっている。その描法も着色による精密な写実的な描写から水墨の簡潔な潑墨(はつぼく)描にいたるまで,大小画面を自由に描きこなしている。墨の濃淡の対照,思い切った省略,躍動する描線などが特徴であり,いずれの作品にも雪村の温かく機知に富んだ人間性がにじみ出ている。代表作に,《風濤図》《松鷹図》(以上東京国立博物館),《琴高群仙図》(京都国立博物館),《呂洞賓図》(大和文華館),《以天宗清像》(芳春院),《竹林七賢図屛風》(畠山記念館),《自画像》(大和文華館)などがある。1542年(天文11)に雪村が書いた《説門弟資云》は日本で最初の本格的な画論で,描写法などを簡潔に説いている。
執筆者:林 進
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室町末期の禅僧、画僧。永正(えいしょう)元年常陸(ひたち)国(茨城県)太田に佐竹氏の一門として生まれる。没年は不明だが、86歳筆の款記(かんき)を伴う『瀟湘八景図屏風(しょうしょうはっけいずびょうぶ)』が知られ、およその活躍年代がわかる。諱(いみな)は周継(しゅうけい)。鶴船(かくせん)、鶴船老人、舟居斎などと号した。禅僧として修行したと思われるが、その詳細は不明で、また画(え)をだれに直接学んだのかも明らかでない。雪舟に私淑したことは、1542年(天文11)雪村自らがその画論を披瀝(ひれき)した『説門弟資』に述べられているが、さらに広く宋元(そうげん)画、ことに牧谿(もっけい)や玉澗(ぎょくかん)などを学び、独自の様式を創造したと推定される。現在これら両名の中国画人に倣った二つの『瀟湘八景図巻』(大阪・正木(まさき)美術館と個人蔵)が知られている。小田原(おだわら)、鎌倉、会津若松などを遍歴、生涯を関東、東北地方に置き、最晩年は会津の芦名盛氏(あしなもりうじ)の知遇を得、会津に近い三春(みはる)に雪村庵(あん)を結び隠棲(いんせい)した。この庵址(あんし)が現存している。地方画人とはいえ、戦国動乱期にいかにもふさわしい、動的表現に優れた力作が多い。代表作に『風濤(ふうとう)図』(京都・野村美術館)、『松鷹(まつたか)図』(東京国立博物館)、『花鳥図屏風』(奈良・大和(やまと)文華館)、『呂洞賓(りょどうひん)図』(同上)などがある。
[榊原 悟]
『亀田孜著『日本美術絵画全集8 雪村』(1982・集英社)』
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生没年不詳。室町時代の画僧。法諱は周継,道号は雪村。鶴船・舟居斎と号す。常陸国生れ。佐竹氏の一族。生年については,1504年(永正元)と1492年(明応元)頃の2説がある。雪舟に私淑して画事に励み,動的で個性的な作品を多く残した。若年の頃は常陸太田の正宗寺に身を寄せたらしいが,その後は会津・小田原・鎌倉など,東北・関東の各地を遍歴。晩年は奥州三春(みはる)に庵を結び隠棲。代表作は「松鷹図」「風濤図」「呂洞賓図」「自画像」(いずれも重文)など。
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…戦国時代の武将は高い教養をもち,画をたしなむものも少なくなかった。山田道安,土岐洞文らがその中で知られるが,常陸の城主として生まれ,出家して画僧となった雪村もまた戦国武将画家のひとりといえよう。彼は小田原で関東画壇に接した以外には中央との接触をもたず,東北南部の風土の中で特異な作風を発展させた。…
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