顔輝(読み)がんき(その他表記)Yán Huī

改訂新版 世界大百科事典 「顔輝」の意味・わかりやすい解説

顔輝 (がんき)
Yán Huī

中国,元初の画家出身江山浙江省)あるいは廬陵(江西省)の2説がある。字は秋月生没年は不明だが,大徳年間(1297-1307)に吉州(江西省)の道観の壁画を制作したという記録がある。元代を代表する道釈人物画家(道釈画)で,真跡と認められる《蝦蟆鉄拐(がまてつかい)図》が京都知恩寺に伝存している。対象の輪郭と立体感を強調する画風には元画らしいなまなましさがあるが,この画風は職業画家たちに継承されて,明初に至るまで広く行われた。日本の明兆《蝦蟆鉄拐図》は顔輝を手本としたもの。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「顔輝」の意味・わかりやすい解説

顔輝
がんき

生没年不詳。中国、元代前半期の画家。浙江(せっこう)省江山の人。字(あざな)は秋月。鬼神や猿などに妙技を発揮し、また道釈人物画を得意とした。詳しい伝記はわからないが、宮廷の画家として大徳年間(1297~1307)吉州(江西省)の道観に壁画を描いている。正筆とされる作品に京都・知恩寺の『蝦蟇鉄拐図(がまてっかいず)』双幅がある。この画は元の道釈画を代表するものの一つで、高度の技量をもって、怪異な風貌(ふうぼう)を精緻(せいち)に描き、衣文(えもん)には肥痩(ひそう)のある描線を用い、陰影を濃厚にした強烈な表現を用いている。また暗い色調のうちに怪奇な雰囲気が品格をもって表されており、宋(そう)画にはみられない神秘的な一画風が形成されている。なお、東京国立博物館の『寒山拾得図(かんざんじっとくず)』も顔輝筆と伝えるものの傑作として知られる。

[星山晋也]


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百科事典マイペディア 「顔輝」の意味・わかりやすい解説

顔輝【がんき】

中国,元代前半期の画家。生没年不詳。字は秋月。浙江江山の人。宋代の写実主義を継ぎながら,その理知的描写を捨てて主題の怪奇性を強調,神秘性の表現に成功した。道釈画,水墨の猿を得意としたが,確証ある遺作は《蝦蟇鉄拐(がまてっかい)図》のみ。伝承作品に《寒山拾得(じっとく)図》。
→関連項目蝦蟇鉄拐

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「顔輝」の意味・わかりやすい解説

顔輝
がんき
Yan Hui

中国,元初の画家。江山 (浙江省) ,あるいは廬山 (江西省) の人。字は秋月。道釈人物画をよくし「筆法奇絶」と評された。大徳年間 (1297~1307) 吉州の道観輔順宮の修復の際に壁画を描いたが,当時,元朝の宮廷画家であった可能性もある。京都,知恩寺の『蝦蟆鉄拐図 (がまてっかいず) 』双幅は代表作で,画面は的確な肉体表現,色彩効果など鬼気迫るものがある。

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