行列簿記(読み)ぎょうれつぼき(その他表記)matrix bookkeeping

改訂新版 世界大百科事典 「行列簿記」の意味・わかりやすい解説

行列簿記 (ぎょうれつぼき)
matrix bookkeeping

簿記会計の帳簿記入を,勘定方式によらずに行列方式によって行う簿記法。つまり,すべての勘定科目を縦と横に並べ複式記入の原理にのっとった金額記入を,該当する二つの勘定の横(借方)と縦(貸方)の交差する個所に累積的に行う。これを取引例で説明してみよう。商品を300万円で売り上げ,代金のうち100万円は現金,残額は掛けとする。この販売取引は,通常の複式記入では図1のように,現金および売掛金勘定の借方と売上勘定の貸方に記入される。

 行列簿記では,図2でみるごとく,上記取引は借方現金と貸方売上の升目に100万円,借方売掛金と貸方売上の升目に200万円が記入される。各勘定の借方合計と貸方合計は,最右欄および最下行に示され,これが合計試算表となる。こうした行列簿記の考え方は,ドイツにおいて将棋盤法Schachbrettmethodeと呼ばれ,かなり古くから存在し,近年は展開表,勘定行列表などとも呼ばれる。経済活動全体一覧もとに観察できること,コンピューター計算リニアプログラミングと連動しうるといった特色があるが,反面,実務上の手間がかかること,計算にむだが多いなどといった欠陥があり,理論上,教育上のモデルにとどまっているのが現状である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「行列簿記」の意味・わかりやすい解説

行列簿記
ぎょうれつぼき
matrix bookkeeping

複式記入の原理を行列形式に転換した記入法をとる簿記形態をいう。すなわち伝統的な勘定簿記=複式記入方式では、取引金額を勘定形式(T字形式)の元帳の借方(左側)と貸方(右側)へ二重(複式)記入するが、行列形式では、のように縦に借方、横に貸方をとった一覧表を用い、たとえば借方のA勘定と貸方のB勘定の交差する箇所に当該取引金額を単一記入する。同一種取引が増えると記録しきれなくなり、またほとんど取引例のない組合せの行列要素も設定せねばならず、大型コンピュータを使うとしても、経済性の面から実用的ではない。しかし教育用、経営計画との関連などでは有用なモデルである。

[佐藤宗弥]


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世界大百科事典(旧版)内の行列簿記の言及

【簿記】より

… 複式簿記における勘定形式はT字形左右対称形式に限られるものではなく,上下連続形式でも行列(簿記)形式でもカード形式でもよいのであり,取引が二重分類され,少なくとも二面的な記録が保証される形式を保持していればよい。 行列簿記は将棋盤式の行列形式を用い,行と列が交差する升目に単一の記入を行うことにより取引の二面的把握を可能にする二重分類簿記(広義の複式簿記)の一形態である。 近年の会計処理の機械化の過程と呼応し,現代ではさまざまな勘定形式が考察されている。…

※「行列簿記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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