日本大百科全書(ニッポニカ) 「西湖佳話」の意味・わかりやすい解説
西湖佳話
せいこかわ
中国、清(しん)初の短編小説集。16巻。全書名は『西湖佳話古今遺蹟(いせき)』。編者は古呉(こご)(杭州(こうしゅう))の墨浪子(ぼくろうし)とあるが、未詳。西湖の名勝・古跡にまつわる葛洪(かっこう)、白居易(はくきょい)、蘇軾(そしょく)、駱賓王(らくひんおう)、林逋(りんぽ)、蘇小小(そしょうしょう)、岳飛(がくひ)、于謙(うけん)、遠公(えんこう)、済顛(さいてん)、文世高(ぶんせいこう)、銭鏐(せんぼく)、円沢(えんたく)、馮小青(ふうしょうせい)、白娘子(はくじょうし)、蓮池(れんち)の物語を史伝や雑記に基づき潤色したものであるが、白娘子の「白蛇伝(はくじゃでん)」など民間説話によったものもある。素朴な口語表現ながら説教臭がなく、古雅な味わいがある。類書に明(みん)末の周楫(しゅうしょう)『西湖二集』、清中期の陳樹基(ちんじゅき)『西湖拾遺』がある。
[尾上兼英]
『飯塚朗・内田道夫・駒田信二訳『中国古典文学大系39 西湖佳話(抄)他』(1969・平凡社)』