精選版 日本国語大辞典 「計なし」の意味・読み・例文・類語
はかり【計】 なし
- ( 間に助詞「は」「も」などのはいることもある )
- ① 目当てがない。手立てがない。どうしようもない。
- [初出の実例]「あふはかりなくてのみふる我が恋を人目にかくる事のわびしさ〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)恋六・一〇一八)
- ② 際限がない。無量だ。数えきれない。並々でない。
- [初出の実例]「はかりなくせまりて、院のうちにすげなくせうかう、雑色・厨女いふことも聞かず」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
- ③ ( 「言うはかりなし」「申すはかりなし」の形で ) 何とも言いようがない、言い尽くすことができない、形容を絶している意に慣用された。
- [初出の実例]「廿余年のこのかたは、たのしみさかへ、申すはかりもなかりつるに」(出典:平家物語(13C前)三)
- ④ 思慮分別がない。浅はかだ。また、際限がなく、分別のつかないさまである。判断がつかない。
- [初出の実例]「隆方はかりなき心ばへにて、殿上に司召のふみ出されたりけるを」(出典:今鏡(1170)一)
計なしの補助注記
仏典に多く見られる「無量」の訓読から生じた語と思われ、「今昔物語集」では「無量シ」「量無シ」のように表記されている。ただし「はかり」という語は平安期にはすでに「目当て」「分別」という意味でも用いられており、これに「なし」を加えたものと見るべき用例も少なくない。