台地が開析されてできた谷間の低地すなわち谷地に分布する水田。谷津田(やつだ)ともいう。一般に湿地で古く開発されたが,豊かな水源に恵まれないため,それらの多くは天水田となり,雨水やわずかな湧水を貯留して水稲作が営まれた。このような事情から谷地田では,水稲の作付け期間以外でも排水を行うことができず,人為的に湿田となっている場合が多い。常時湛水(たんすい)下におかれる湿田土壌は,還元状態が発達するため,水稲の生育には不適で収量は概して低い。また用水を天然の降雨に依存する程度が高いため,降雨の少ない年次には干害を受け,湧水が低温である場合には冷害を受けるなど,作柄は不安定となる。日本では関東地方にその分布が多く,茨城,千葉両県には合計約5万haの谷地田が存在するといわれる。利根川より房総半島に導水された両総用水は,同地の谷地田の改善に大きな役割を果たしてきている。
→谷戸(やと)
執筆者:山崎 耕宇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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