豊洲新市場(読み)とよすしんしじょう

知恵蔵 「豊洲新市場」の解説

豊洲新市場

東京都が、世界屈指の取引規模を誇る築地市場(中央区)の移転先として、江東区豊洲に開設を予定している中央卸売市場。2001年に移転の方針が決まり整備が進められているが、国の環境基準を大幅に上回る有害物質が検出されたことによる土壌汚染対策などで開場時期が何度も延期され、開場には至っていない(16年9月現在)。
豊洲新市場が位置するのは、築地市場の約2キロメートル南東にある約40ヘクタールの埋め立て地で、東京ガスの工場跡地。築地市場の施設の老朽化や手狭になったことに伴う再整備計画が頓挫し、大消費地の周辺で交通アクセスの良い豊洲地区が移転先に選ばれた。新市場の計画は、03年に基本構想、04年に基本計画、05年に実施計画のまとめが策定され、06年には施設の規模や配置をとりまとめた基本設計について市場関係業界と大筋で合意した。しかし、発がん性物質のベンゼンが08年の調査で環境基準の最大4万3000倍の数値で検出されるなど土壌や地下水の汚染が分かり、都は専門家会議や技術会議を設けて対策を検討し、11年から汚染土壌を取り除いて盛り土をする対策を行った。12年に新市場の概要を公表した際には、14年度中の開場を目指していたが、追加の土壌対策などにより移転時期が遅れ、事業の長期化や建設費の高騰などもあり事業費も大幅に増加した。都は15年、総事業費が09年の計画より約1568億円増え約5884億円となる見通しを明らかにしている。
16年11月7日の開場に向けて進んでいたが、直前の知事選で当選した小池百合子知事が8月31日に、安全性への懸念、不透明な事業費の大幅増加、情報公開の不足を理由に移転開場の延期を正式に発表。その後、主要な建物の下で土壌汚染対策の盛り土がされず、施設の地下が空洞になっていることなどが発覚し、移転を巡る動きはますます混迷を深めている。

(原田英美 ライター/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android