地下(読み)チカ

デジタル大辞泉 「地下」の意味・読み・例文・類語

ち‐か【地下】

地面の下。土の下。地中。「地下二階」⇔地上
死後の世界。冥土めいど。泉下。「地下に眠る」
表面に表れない所。社会の表面から隠れて行う社会運動政治運動などの非合法面をさす。「地下に潜行する」
[類語]地底地中大地

じ‐げ〔ヂ‐〕【地下】

清涼殿殿上てんじょうの間昇殿することを許されていない官人総称。また、その家柄。一般には蔵人くろうどを除く六位以下をいう。地下人。⇔堂上
官職・位階など公的な地位をもたないこと。また、その人・身分農民庶民民衆。地下人。
地元の人。土着の人。地下人。
自分の住んでいる村など。地元。

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精選版 日本国語大辞典 「地下」の意味・読み・例文・類語

じ‐げヂ‥【地下】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「じ」「げ」はそれぞれ「地」「下」の呉音 )
  2. 清涼殿殿上の間に昇殿する資格を認められていないこと。また、その人。堂上、または公卿殿上人に対する語。一般には蔵人を除く六位以下の者および四位・五位のうちの殿上人の資格を得ていない者についていうが、本来昇殿の資格ある者でも一時的にこれを奪われて地下となる場合があり、また鎌倉末以降家格が固定すると位階官職に関係なく地下であり続ける者が生じた。地下人。⇔雲客(うんかく)
    1. [初出の実例]「午二刻殿上上達部左大臣以下候御前、地下卿上(相か)等候南殿」(出典:九暦‐九暦抄・天暦二年(948)七月一九日)
    2. 「この侍従大納言殿こそ、備後介とてまだ地下におはせしとき蔵人頭になりたまへる、例いとめづらしきことよな」(出典:大鏡(12C前)三)
  3. 位階、官職など公的な地位を持たないこと。またその人。地下人。庶民。世俗。民衆。
    1. [初出の実例]「近比、為世・為相卿、為道朝臣みな達者にて、朝夕にもてあそばれけり。地下にも花の下・月の前の遊客上手おほくきこゆ」(出典:連理秘抄(1349))
  4. 京師および本所・領家に対する田舎、在地。また、その住民。
    1. [初出の実例]「剰義定居地下之時。件両人乍馬打通其前訖。是已存野心者也」(出典:吾妻鏡‐養和元年(1181)三月一三日)
    2. 「一地下事、左様に百姓等とかく煩候らん事、返返無勿躰候」(出典:高野山文書‐嘉慶元年(1387)一二月五日・太田式部丞書状)
  5. 自分の住んでいる集落の内。郷内。
    1. [初出の実例]「Gigueno(ヂゲノ) シュクラウ ジャクハイノ モノマデ」(出典:天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事)

ち‐か【地下】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 地面の下。大地の下。地中。土中。
    1. [初出の実例]「地下徹瞻、水上能歩」(出典:三教指帰(797頃)中)
    2. 「根は、地下より、食物を吸ひ」(出典:小学読本(1873)〈田中義廉〉二)
    3. [その他の文献]〔史記‐大宛伝〕
  3. 死後の世界。あの世。よみじ。冥土(めいど)。黄泉。
    1. [初出の実例]「死して地下に吾君に逢ば」(出典:寛永刊本蒙求抄(1529頃)四)
    2. [その他の文献]〔漢書‐王陵伝〕
  4. 表面に表われない所。目立たないこと。世間から離れていること。また、社会運動や政治運動などで非合法な面をもいう。
    1. [初出の実例]「幼(いとけな)き折より地下(チカ)に人と為りて、浮世を知らで過したればなるべし」(出典:寧馨児(1894)〈石橋思案〉五)
  5. じげ(地下)

じ‐さがりヂ‥【地下】

  1. 〘 名詞 〙 土地がだんだん低くなっていくこと。また、その土地。
    1. [初出の実例]「北は大山に継き峙(そばた)ち、三方は地僻(ぢサガリ)に、峯に懸れる白雲、腰を廻れり」(出典:太平記(14C後)七)

じ‐びたヂ‥【地下・地平】

  1. 〘 名詞 〙じべた(地━)
    1. [初出の実例]「雪汁のかかる地びたに和尚顔」(出典:俳諧・文化句帖‐元年(1804)十二月)

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改訂新版 世界大百科事典 「地下」の意味・わかりやすい解説

地下 (じげ)

(1)〈堂上〉に対する語で,清涼殿殿上の間に昇殿する資格を持たないこと,およびその人を指す。一般的には,蔵人を除く六位以下の官人,および四位,五位のうち殿上人の資格をもたない者(〈地下の諸大夫(しよだいぶ)〉)をいうが,本来は昇殿の資格がある者でも一時的にこれを奪われる場合があった。特に鎌倉末期以降に公家の家格が固定されると,位階官職に関係なく地下であり続ける者を生じ,堂上家以外の出身者は公卿となっても昇殿しない慣例となった。これを〈地下の公卿〉というが,このころには代々地下の家の出身者を任用する官職も定まり,これを〈地下の官〉とよぶようになった。(2)〈官人〉に対する語で,位階・官職などの公的資格をもたないこと,およびその人を指す。特に南北朝室町時代には,公家,武家,僧侶などに対する一般の庶民,民衆,世俗の人々の総称として〈地下人〉という呼称が広く使用されたが,そこでは多くの場合,個人の庶民ではなく集団として対象化されているところに特徴が認められる。荘園年貢の納入請負制度において,地頭請や守護請に対し,在地の農民である名主・百姓たちが惣村として年貢納入を請け負う制度を地下請といい,村人たちが必要な資材や労力を提供しあって一村共同で経営した網漁業を地下網といったごときは,この例である。(3)中央に対する地方,京や鎌倉に対する田舎,公家に対する武士や町人・百姓,荘園の本所領家に対する現地,幕府御用に対する公的背景をもたぬものなども,広く地下,地下方,地下風などとよばれた。荘園の現地に保管された田地目録を〈地下目録〉とよび,伝統的な堂上連歌に対して庶民の間で行われた自由な連歌を〈地下連歌〉とよんだことなどもこれである。こうした地下の用語は鎌倉時代以降しだいに一般化するが,特に室町時代の文化芸能は多かれ少なかれ地下風というべき性格をそなえており,この用語の盛行を裏づけている。
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百科事典マイペディア 「地下」の意味・わかりやすい解説

地下【じげ】

(1)昇殿を許されない人,その家柄。清涼殿の殿上の間(てんじょうのま)に昇ることを昇殿といい,昇殿を許される公卿(くぎょう)と殿上人に対する。一般的には蔵人(くろうど)を除く六位以下の官人。(2)位階,官職などの公的資格をもたないこと,その人。公家,武家,僧侶(そうりょ)などに対する庶民の総称で,南北朝・室町時代には〈地下人〉という呼称が広く使用された。→位階勲等

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「地下」の解説

地下
じげ

朝廷官人の身分呼称の一つ。殿上人に対し,清涼殿への昇殿を許されない階層の官人の総称。位階が六位以下の者および四・五位で昇殿資格のない者(地下の諸大夫)や,その資格を剥奪された者。ただし蔵人(くろうど)は例外で,六位でも昇殿できた。中世に公家の家格が確定し地下の家柄が固定すると,その家格の者が昇進して公卿となっても昇殿できなかった。これを地下の上達部(かんだちめ)とよぶ。近世,地下の官人は外記方・官方・蔵人方に分属し,それぞれ上首の押小路・壬生・平田の3家に統轄された。朝廷の官人以外の者を地下・地下人ということもあり,中世には名主・百姓などの一般庶民階層の総称となった。地下人の居住地,京都などに対する地方や在地も地下といった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地下」の意味・わかりやすい解説

地下
じげ

平安時代,殿上人に対して,昇殿の許されなかった官人をいった。地下人ともいい,また,殿上人を「うえびと」というのに対して,「しもびと」とも呼んだ。元来,昇殿は機能または官職によって許されるものであったため,公卿でも地下公卿,地下上達部 (かんだちめ) のような昇殿しない人や,四位,五位の地下の諸大夫もいたが,普通は六位以下の官人をさした。近世になると家格が一定し,家柄によって堂上,地下と分れた。その他,広く宮中に仕える者以外の人,農民を中心に庶民を地下と呼ぶ場合もあった。 (→名子被官制度 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地下」の意味・わかりやすい解説

地下
じげ

朝廷の官人のうち、昇殿を許されない者の総称、またその家柄。清涼殿(せいりょうでん)の殿上(てんじょう)の間に昇るのを昇殿といい、昇殿を許されるのを常例とする公卿(くぎょう)と、四位以下で昇殿を許された廷臣すなわち殿上人(てんじょうびと)とに対立する呼び名とされた。のち廷臣の家格が固定するに伴い堂上家(とうしょうけ)に対する称ともなり、地下出身の官人は三位に昇っても昇殿は許されなかった。また意味が拡大されて、公家(くげ)、武家に対する一般農民や庶民の称ともなった。

[橋本義彦]

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岩石学辞典 「地下」の解説

地下

地球深部で生成された岩石および鉱物に用いる語である.以前はすべての斑晶はintratelluricと考えられていた[Rosenbusch : 1882].ラテン語のintraは内部の,tellusは地球を意味する.インフラテルリック(infratelluric)[Michel-Levy : 1889].

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普及版 字通 「地下」の読み・字形・画数・意味

【地下】ちか

地中。

字通「地」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の地下の言及

【季節的集落】より

…出作り源地ともいうべき居住地(居村または親村。白峰村ではこれを地下(じげ)といった)は,農耕地が狭少で零細的農業経営であり,それに加えて豪雪地帯のため,生活の糧を得る手段として夏季に家族で山地に入り出作小屋を建て,焼畑により開墾し,若干なりとも耕地を拡張した。すなわち出作先は夏村であって,冬季になると親村に帰村するという組織をもつ季節的集落である。…

【地下請】より

…中世,地下百姓といわれた農民たちの共同責任において,荘園の年貢や公事納入を請け負う制度。百姓請ともいう。…

【殿上人】より

日給の簡(につきゆうのふだ)に名を記されたので,昇殿の許可を〈簡につく〉ともいった。これに対し殿上を許されない者を地下(じげ)と称した。昇殿は勅許によって認められ,人数は《寛平御遺誡(かんぴようのごゆいかい)》では25人,六位を含めて30人と定められたが,のち100人近くに増えた。…

【村】より

…【木村 礎】
[〈むら〉と村]
 農山漁村における基礎的な地域社会としてのむらはその構成員である各家の維持存続に不可欠な共同組織であり,通常むら内の居住者は相互に面識関係がある。自分たちのむらのことをザイショ(在所)とかジゲ(地下)と呼ぶ地方もあり,また近代の行政用語でク(区)といったり,ブラク(部落)と称することも多い。むらは,《古事記》に〈伊幣牟良〉(いへむら)と出てくるように,もともと家々の集合の意味であった。…

※「地下」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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