ローマ帝政時代の元首政から専制君主政への移行期において、軍隊に擁立された皇帝。セウェルス・アレクサンデル帝の殺害(235)からディオクレティアヌス帝の登極(284)に至るおよそ半世紀間を、とくに軍人皇帝時代とよぶ。
2世紀末以後のセウェルス朝の支配は、帝国統治における軍事面の重視を招き、軍隊が横暴になった。そのため、ローマ帝国は政治的、軍事的混乱に陥り、全面的、状態的、集団的あるいは慢性的危機の現象を呈した。この期間、帝位についた者は僭称(せんしょう)者も含めて26人に及ぶが、そのうち天寿を全うした者は2人にすぎない。帝国西部におけるゲルマン人の侵入や東部におけるササン朝ペルシアの攻勢、あるいは帝国内分離国家の成立といった重圧に苦しみながら、諸帝は、元老院議員などの富裕階層の財産没収、兵士の騎士身分への昇進などによって危機の打開を図った。とくにガリエヌス帝とアウレリアヌス帝は、軍制改革に一定の成果を収めたが、相次ぐ戦費・軍事費の圧迫による莫大(ばくだい)な財政支出、および貨幣改悪と通貨増発といった経済的混乱は、3世紀末まで収拾されなかった。
[本村凌二]
軍隊に擁立されて立った古代ローマの皇帝,僭称(せんしょう)者。セウェルス朝の軍隊強化による支配の結果,軍隊が専横になり,セウェルス朝最後の皇帝アレクサンデル殺害後,ローマ帝国は235~284年に政治的・軍事的混乱に陥った。この間に26人もの皇帝やその僭称者が立った。大部分は暗殺や戦争で倒れ,諸帝は元老院議員など富裕階級の財産を没収し,兵士を騎士階級に昇進させ,支配階層の交替を招いた。ディオクレティアヌスによって混乱は終わった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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