改訂新版 世界大百科事典 「輪奈織」の意味・わかりやすい解説
輪奈織 (わなおり)
パイル織ともいう。布面に輪奈状をなす糸を組織した織物の総称で,仕上げに輪奈の先端を切った〈カット・パイル〉と,輪奈状のままにした〈ループ・パイル〉とがある。ビロード,別珍(べつちん),タオル地などがこの種の織物に当たる。織法には経(たて)に輪奈状を構成する糸を用いるもの(経パイル)と,緯(ぬき)にパイル糸を織り入れるもの(緯パイル)とがあり,ふつうビロード,タオル地などは経パイル,別珍,コール天(コーデュロイ)などは緯パイルによっている。歴史的にも古くから見られる織物技法で,西アジアでは4~5世紀ころから,上エジプトのコプト人の染織品中にこの技法が織物の一部,あるいは人物文様などの全面に用いられている。また中国では馬王堆前漢墓出土の織物中に〈起毛錦〉と呼ばれるものがあり,これも輪奈織の一種と考えられる。
執筆者:小笠原 小枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報