パイル(読み)ぱいる(英語表記)Howard Pyle

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パイル」の意味・わかりやすい解説

パイル
pile

織物表面をおおう柔らかい立毛,総 (ふさ) ,輪奈 (わな) ,毳 (けば) のこと。また,これらのあるパイル織 (添毛織) をさす。織物の表面に織り立てた毛総を切ったカットパイルと,切らずに輪奈にしたままのアンカットパイルがある。カットパイルにはビロード別珍,シール,アストラカンモケット絨毯などがあり,アンカットパイルではタオルが代表的である。厚地で弾力性があり,保温性,断熱性,吸音性がよく,耐摩耗性などの特色をもち,手ざわりがしなやかである。毛織絹織,綿織,化繊織物などに利用され,敷物,椅子張地,カーテン,防寒用衣料,儀礼服などのほか,工業用として,断熱材料,フィルタなどに使われる。

パイル
Pyle, Howard

[生]1853.3.5. デラウェア,ウィルミントン
[没]1911.11.9. イタリア,フィレンツェ
アメリカのイラストレーター画家童話作家。ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグに学び,世紀末のアール・ヌーボー様式の時期に新聞,雑誌,小説,童話に多くの挿絵を描いた。また,自身で童話を書き,みずから挿絵を描いた絵本を制作した。主要作品 (文,挿絵とも) 『ロビン・フッドの愉快な冒険』 The Merry Adventures of Robin Hood (1883) ,『銀の腕のオットー』 Otto of the Silver Hand (1888) など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パイル」の意味・わかりやすい解説

パイル(Howard Pyle)
ぱいる
Howard Pyle
(1853―1911)

アメリカの児童文学作家。デラウェア州のクェーカー教徒の家に生まれ、教養豊かな母の影響で幼時から書物絵画に親しんで育った。美術学校で学んだのち、挿絵入りの印象記を出版社に送ったところ、まず絵のほうが認められ、ニューヨークで挿絵画家として成功した。作家としての出発は、デラウェアに戻ったのちの1883年に出版した『ロビン・フッドのゆかいな冒険』で、以後、イギリスのフェアリー・テイルや、中世を題材にした歴史物語などを書き続けた。作品にはすべて自らの挿絵を添えることにより挿絵の重要さを世人に認識させ、同時にこの面での後進の指導にもあたった。

[掛川恭子]

『村山知義・村山亜土訳『ロビン・フッドのゆかいな冒険』(1971・岩波書店)』


パイル(織物)
ぱいる

添毛(てんもう)、輪奈(わな)ともいい、経(たて)糸または緯(よこ)糸で地組織しているなかに、毛経(けだて)あるいは毛緯(ぬき)を織り込み、生地(きじ)の片面または両面に輪奈を浮かせたりする。この輪奈を総(ふさ)またはパイル毛ともいい、そのままで使うこともあるが、輪の真ん中をナイフで切り開いて毛羽を出すこともある。パイルを出した織物は、ビロード、別珍、コーデュロイ、テリー織など多種あるが、厚地で弾力性があり、柔軟性に富むので、それぞれの用途に向けられる。

[角山幸洋]


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