日本大百科全書(ニッポニカ) 「輸出入カルテル」の意味・わかりやすい解説
輸出入カルテル
ゆしゅつにゅうかるてる
export-import cartel
輸出および輸入取引についての業者間の協定。貿易カルテルともいう。輸出カルテルは、貿易摩擦の回避、輸出過当競争の防止などの必要から、輸出品の取引条件(価格や数量など)を制限することを目的に輸出業者間で結成され、輸入カルテルは、外国の輸出独占(たとえば、社会主義国のような国家による独占的な貿易の場合や、輸出国において輸出業者が一社だけの場合)に対抗するためや、輸入過当競争の防止のために、輸入品の取引条件を制限することを目的に輸入業者間で結成される。
これら貿易カルテルは競争を制限する行為であるが、輸出入取引法によって独占禁止法の適用除外として認められている。輸出入取引法は貿易取引の秩序を確立することにより、外国貿易の健全な発展を図ることを目的とし、〔1〕不公正な輸出取引の防止、〔2〕貿易業者による輸出入価格規制や数量制限などの協定の締結を認める、〔3〕輸出組合や輸入組合の結成を認める、などの内容になっている。したがって、わが国の貿易カルテルには、〔2〕の貿易取引に関する貿易業者間の協定(カルテル協定による輸出・輸入カルテル)と、〔3〕の輸出・輸入組合規約によるもの(組合方式による輸出・輸入カルテル)との二種類がある。
[田中喜助]
『松下満雄著『国際カルテル』(日経新書)』▽『伊従寛編『独禁法の手引き』(1982・東洋経済新報社)』