輸出自主規制(読み)ゆしゅつじしゅきせい(その他表記)voluntary export restriction

日本大百科全書(ニッポニカ) 「輸出自主規制」の意味・わかりやすい解説

輸出自主規制
ゆしゅつじしゅきせい
voluntary export restriction

相手国側の輸入制限を回避するための一時的な措置として、輸出国側が自主的に輸出数量や価格などの規制を行うこと。特定商品の輸入急増による国内産業の損害に対抗する手段として、世界貿易機関WTO)において、ガット第19条のセーフガード条項と、WTOのセーフガード協定による緊急輸入制限措置がある。しかし、この発動には関係国との協議の成立が必要であり、運用はWTOの無差別原則に従って、特定国のみでなくすべての加盟国からの輸入品に適用しなければならない。そのため、WTOの枠外で、輸入国は特定商品の輸出国に対してなかば強制的に輸出自主規制を求めてくることが多くなった。

 輸出自主規制は、日本の輸出力増大に伴って発生したものであり、1970年代以降、日本からアメリカ向けの繊維製品、鉄鋼カラーテレビ自動車工作機械、さらにEC(ヨーロッパ共同体。現EU=ヨーロッパ連合)向けの鉄鋼やVTRビデオテープレコーダー)などに相次いで規制措置がとられた。その後対象国もしだいに拡大され、アメリカ対EC(EU)、日本・アメリカ・EC(EU)対NIES(新興工業経済地域)などに及んでいる。わが国の輸出自主規制の方法には、輸出入取引法による輸出カルテル、政府間交渉による市場秩序維持協定OMA)、政府の行政指導などがある。

[田中喜助]

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改訂新版 世界大百科事典 「輸出自主規制」の意味・わかりやすい解説

輸出自主規制 (ゆしゅつじしゅきせい)
voluntary export restraints

輸入の急増が市場攪乱をおこしたとしてA国が輸出相手国B国に対して秩序ある輸出を求め,B国がこれを認めて輸出を自主的に規制することをいう。実質的には輸出国に責任をとらせたかたちの輸入阻害措置である。

 1970年代に入り,貿易摩擦回避の手段として,日米間で繊維(1971。〈日米繊維交渉〉の項参照),鉄鋼(1972),カラーテレビ(1977),自動車(1981)とあいついで規制措置がとられた。このような自主規制措置(OMA(輸出秩序維持協定)も含む)の多発は70年代に貿易摩擦が深刻化したためでもあるが,現在のGATT(ガツト)規約による緊急輸入制限条項が発動しにくいことにも原因がある。緊急輸入制限条項では,輸入急増によってある国の産業に大きな被害が生じたときには,緊急避難としてその国が輸入制限措置(セーフガード)をとることを認めている。しかし発動条件や適用期間,報復措置についての規定が不明確な点が多く,さらに輸出が急増していない国に対してもそれが無差別に適用されるなど問題点が多い。このため最近ではGATTの枠外で貿易当事国間の取決めによる輸出自主規制がふえている。ことに日本の場合に輸出自主規制が多用されるのは,日本側が主体性を保持できるほか,数量規制の場合には高級品に品目をシフトすることによって輸出額を伸ばせるといった理由にもよる。しかし自主規制で貿易摩擦は一時的に緩和されるかもしれないが,規制そのものは貿易抑止的であり,世界貿易の拡大を妨げる可能性が強い。また自主規制を行っている産業では,当該企業が市場確保のために相手国における現地生産方式に積極的に取り組むケースがみられる。これは相手国の雇用創出に結びつく。70年代後半以降80年代の家電業界や自動車業界の動きはその好例である。
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百科事典マイペディア 「輸出自主規制」の意味・わかりやすい解説

輸出自主規制【ゆしゅつじしゅきせい】

輸出国が,一般には輸入国の要求に応じて輸出量を自主的に規制すること。特に日本はアメリカ向けに繊維・鉄鋼・カラーテレビ・自動車などで輸出自主規制を行ってきた。これはアメリカ国内の独占禁止法のために,アメリカの輸入自主規制を行うのが困難だからである。これに日本が応じない場合,スーパー301条の発動をちらつかせて脅しをかけるのが,アメリカ通商政策の常套。
→関連項目セーフガード

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「輸出自主規制」の意味・わかりやすい解説

輸出自主規制
ゆしゅつじしゅきせい
voluntary export restriction; VER

輸入国の諸事情を配慮して輸出国が輸出数量や価格などを自主的に制限すること。日本では輸出入取引法に基づいて繊維,カラーテレビ,自動車などの品目で実施された。自主規制の問題点としては,実質的効果は輸入国の輸入制限と同じであるにもかかわらずガットの抜け穴として多用される傾向にあり,管理貿易,保護主義の台頭を助長していることなどが指摘されている。

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