農業インテグレーション(読み)のうぎょういんてぐれーしょん(その他表記)agricultural integration

日本大百科全書(ニッポニカ) 「農業インテグレーション」の意味・わかりやすい解説

農業インテグレーション
のうぎょういんてぐれーしょん
agricultural integration

農業の技術が発展するにつれて、その生産や販売の方法は小規模なものから大規模なものに変容してゆく。その過程において、生産から加工、流通、消費に至るまでの間にさまざまな分業が生ずる。そして、分業化されたそれぞれの部門の間での相互依存関係が一つのシステムに統合インテグレーション)されるようになる。たとえば、採卵養鶏の場合、雛(ひな)の孵化(ふか)、飼料供給、飼育管理、販売等々はそれぞれ分業化され、これらが特定の資本によって系列化、システム化されてゆく。これが農業インテグレーションである。

 農業インテグレーションは、食料の需要が高度化し、加工食品が増大して多様な食品が大量に出回るにつれて、従来の孤立分散的な零細農業では対応できなくなって生ずる現象である。そこでは、一方では技術過程における生産や販売の連結関係と、他方では経済過程における資本による系列関係との両面が、並行して進むようになる。こうした現象は、資本主義が独占段階に入ってから急速に現れる。20世紀末からはバイオテクノロジーの著しい発展により、特定の技術を独占したアグリビジネスによる農業インテグレーションが進んでいる。それまでの農民的農業に対して、大資本による農業への支配の一形態ともいえよう。わが国では総合商社やアグリビジネスによる畜産物のインテグレーションの事例が多い。

 農業インテグレーションは、その統合形態からみると、水平的統合(同一段階で横断的に統合する)と垂直的統合(前後段階で縦断的に統合する)とがあるが、後者の場合がより一般的である。

臼井 晋]

『宮崎宏著『農業インテグレーション』(1972・家の光協会)』『川村琢・湯沢誠・美土路達雄編『農産物市場論大系』全3巻(1977・農山漁村文化協会)』『日本農業市場学会編『農産物貿易とアグリビジネス』(1996・筑波書房)』『中野一新編『アグリビジネス論』(1998・有斐閣)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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