日本大百科全書(ニッポニカ) 「連鎖方式」の意味・わかりやすい解説
連鎖方式
れんさほうしき
Chain-Linking Method
物価指数などを算出する際、加重平均に用いる財(商品)やサービスの価格を、かならず1年前を100として評価して算出に用いる方式。固定基準年方式では、基準時と比較時の間隔が離れるほど価格水準の変動が過大あるいは過小に推計される傾向がある。このため、5年に1回ごとに基準時を変更して計算されているが、デジタル化の進展など急激な経済構造の変化のもとで、5年に1回の基準改定でもゆがみが意識されるようになった。消費者物価指数、企業物価指数などでは参考系列として連鎖方式の指数の算出が始まっているほか、国内総生産(GDP)の支出側系列等に関する統計である四半期別GDP速報でも、2004年(平成16)12月8日に公表された2004年7~9月期の2次速報から連鎖方式のデフレーターが導入された。
たとえば、固定基準年方式のラスパイレス指数は下記の式のようになる(財iの基準時の価格をp0i、比較時t時点の価格をpti、その財の基準時の購入量をq0iとする)。
これに対して、連鎖方式のラスパイレス指数は下記の式のように、基準時と比較時の2時点の比較ではなく、比較時とその1年前という隣接する2時点の間で価格などがどのような経路をたどったかという情報を利用して算出されている。
まさに毎年基準改定をすることで指数のゆがみを小さくできる連鎖方式であるが、加法整合性がなくなる、ドリフト(後述)が生じるという二つの問題がある。
固定基準年方式のデフレーターを用いていた際、実質GDPはその内訳である実質民間最終消費支出などの需要項目の合計と一致していた。これを加法整合性とよぶ。しかし、連鎖方式のデフレーターではこの加法整合性が成立しなくなったため、需要項目の合計と実質GDPの差は開差として示されている。
一方、ドリフトとは以下の現象をさす。ある2時点の間(0時点とt時点)で価格と数量の変化が生じたが、t時点では同じ状態に戻ったとする。この際、価格指数は0時点とt時点で同じになるはずであるが、連鎖方式のデフレーターでは同じにならないことがあるということである。
[飯塚信夫 2019年2月18日]