家庭医学館 「遅発性ウイルス脳炎」の解説
ちはつせいういるすのうえん【遅発性ウイルス脳炎 Slow Viral Encephalitis】
ウイルスが感染してから、かなりの日数を経ておこる脳炎で、つぎのようなものがあります。
■亜急性硬化性全脳炎(あきゅうせいこうかせいぜんのうえん)(SSPE)
麻疹(ましん)(はしか)ウイルスが感染したり、弱毒麻疹ワクチンの接種を受けた後、数年~数十年を経て発症するまれな脳炎です。
4~20歳代、とくに学童に多くみられ、落ちつきがなくなり、学業成績の低下、記憶力の低下、異常行動が徐々に進行し、数週~数か月の間に、けいれんや動かそうと思わないのにからだの一部が動いてしまう不随意運動(ふずいいうんどう)、視力障害などが現われてきて、しだいに無口、認知症となり、寝たきり状態となって、数か月から2~3年の間に死亡します。
有効な治療法はなく、1歳以上の子どもに麻疹ワクチンの接種をして、麻疹の流行をなくすことがたいせつです。
■進行性多巣性白質脳症(しんこうせいたそうせいはくしつのうしょう)
がん、白血病(はっけつびょう)、悪性リンパ腫(しゅ)などの慢性消耗性疾患や臓器移植などのために免疫機能(めんえききのう)が低下している人の脳(とくに白質(はくしつ))に、ウイルスが感染しておこるまれな脳炎です。
運動まひ、視力障害、失語症(しつごしょう)、認知症、意識障害などが徐々に現われ、最後には昏睡(こんすい)状態におちいって、死亡することが多いものです。
抗ウイルス薬が有効なこともありますが、もとにある病気が重篤(じゅうとく)なものが多いため、予後はよくありません。
薬剤、とくに抗がん剤を使用しているときに脳の白質が障害され、似たような症状(白質脳症(はくしつのうしょう))が出ることがまれにありますが、薬の使用を中止すれば回復します。