朝日日本歴史人物事典 「道命」の解説
道命
生年:天延2(974)
平安中期の僧,歌人。父は藤原道綱。幼時に比叡山で出家。総持寺阿闍梨,天王寺別当となる。法華経読誦にすぐれ,貴顕の信仰を集めた。軽口を好み,洒脱な人柄であったという。花山院周辺の歌人として出発。院の没後「思ひ出もなき春なれど君をただ見奉りし程ぞ恋しき」など多くの哀傷歌を詠む。嵯峨の法輪寺にも住し,赤染衛門などと交遊があった。機知諧謔の歌が多いが,「見る人はみななくなりぬ我を誰哀れとだにもいはむとすらむ」など無常観や山里,旅の趣を詠んだ秀歌も残している。恋歌も多く,後世,和泉式部との交渉が伝説化するなど,僧侶の枠にはおさまりきれない多面的な性格であったと思われる。
(安隨直子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報