日本大百科全書(ニッポニカ) 「道徳感覚学派」の意味・わかりやすい解説
道徳感覚学派
どうとくかんかくがくは
Moral sense school
道徳的な善悪、行為の正邪、徳・悪徳などを判定でき、人間に備わる道徳感覚または感情の存在を認める、18世紀イギリスの一群の思想家の総称。すなわち、他人の幸福を願う自然の愛情である「仁愛(じんあい)」の源泉として「正邪の感覚」を認めるシャフツベリ伯や、類似の考え方を継承し、それをより組織化したハチソン、また、自愛以外の道徳感覚としての「良心」の存在を認めたバトラーらをいう。また、ヒュームは一面でハチソンに似るが、彼は前述の思想家たちのように特殊な能力としての感覚でなく、愛や憎しみの穏やかな変形としての道徳感情を認め、自然主義的な傾向を示す。A・スミスにも類似の特色がみられる。
[杖下隆英]
『日本倫理学会編『イギリス道徳哲学の諸問題と展開』(1991・慶応通信)』
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