改訂新版 世界大百科事典 「違式〓違条例」の意味・わかりやすい解説
違式違条例 (いしきかいいじょうれい)
明治初年における軽微な犯罪を取り締まる単行の刑罰法。1872年(明治5)11月8日の東京府達をもって,同月13日から施行された東京違式詿違条例が最初。この条例は,五人組法や東京府達として出されていたもろもろの禁令をもとに制定されたもので,総則5条,違式罪目23条,詿違罪目25条の53条からなる。翌73年7月19日の太政官布告により各地方違式詿違条例が制定され,各地方にも公布・施行されることになった。同条例は90条からなり,風俗・交通・衛生・営業・用水など日常的秩序維持にかかわる軽微な犯罪と処罰を規定する。違式・詿違の罪を犯す者は,贖金(しよくきん)を追徴され,資力がない場合は,違式が笞罪(ちざい),詿違が拘留に処せられ,適宜懲役に換えられるものとした。違式罪目としては,〈地券所持ノ者諸上納銀ヲ怠リ地方ノ法ニ違背致ス者〉〈春画及ヒ其類ノ諸器物ヲ販売スル者〉など37条,詿違罪目としては,〈狭隘ノ小路ヲ馬車ニテ馳走スル者〉〈婦人ニテ謂レナク断髪スル者〉など48条が列挙されている。ただし各地方庁は,地方の便宜により警保寮へうかがい出て斟酌(しんしやく)増減できるものとした。これら違式・詿違の罪に対する裁判権は,1872年10月19日の警保寮職制章程により,大警視以下の警察官に与えられていた。その後同条例は,旧刑法(1880年7月17日公布,82年1月1日施行)第4編違警罪および各地方の違警罪罰則の制定により吸収・廃止され,警察官の裁判権は,85年9月24日の違警罪即決例に発展し定着した。
→違警罪
執筆者:吉井 蒼生夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報