違警罪(読み)イケイザイ

デジタル大辞泉 「違警罪」の意味・読み・例文・類語

いけい‐ざい〔ヰケイ‐〕【違警罪】

旧刑法で、拘留科料にあたる軽い罪の総称。明治18年(1885)の違警罪即決例により、正式裁判によらずに警察署長が即決処分によって罰することが認められていた。昭和23年(1948)軽犯罪法施行で失効

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精選版 日本国語大辞典 「違警罪」の意味・読み・例文・類語

いけい‐ざいヰケイ‥【違警罪】

  1. 〘 名詞 〙刑法(明治一三年太政官布告三六号)に規定した拘留、科料にあたる軽い罪。初め、違警罪を管轄する治安裁判所を設ける予定であったが、違警罪即決例(明治一八年太政官布告三一号)により、正式裁判によらず警察署長が即決処分によって処罰することが認められた。昭和二三年軽犯罪法施行で失効。

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改訂新版 世界大百科事典 「違警罪」の意味・わかりやすい解説

違警罪 (いけいざい)

1880年公布の旧刑法が,フランス刑法の重罪軽罪・違警罪という犯罪の分類にならい,その第4編に定めた,拘留・科料にあたる軽微な罪の総称。公衆道徳違反的内容をもつものが多い。同年公布の治罪法は違警罪を管轄する裁判所として治安裁判所を予定したが実現せず,85年に,警保寮職制章程(1872),違式詿違条例(いしきかいいじようれい)などを前身として,違警罪につき警察署長またはその代理たる官吏が即決処分により処罰しうる権限・手続を定めた違警罪即決例(太政官布告31号)が成立した。1907年公布の刑法は旧刑法の犯罪分類を廃したが,刑法施行法31条は拘留・科料にあたる罪を他法適用上は違警罪とみなし,従前の諸規定も翌年警察犯処罰令に再編された。違警罪即決例は,警察犯処罰令などと相まって,犯罪捜査や不当拘禁・弾圧の手段として濫用された。第2次大戦後の47年即決例は廃止,翌年には処罰令も軽犯罪法に換えられた。
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百科事典マイペディア 「違警罪」の意味・わかりやすい解説

違警罪【いけいざい】

法定刑罰種類により,犯罪を重罪・軽罪・違警罪の三つ区分し,そのうち拘留または科料にあたる犯罪を違警罪とした。フランス刑法や日本の旧刑法で採用。現行刑法はこれを採らないが,刑法施行法(1908年)で,拘留または科料だけに当たる罪は,他の法律の適用については旧刑法の違警罪とみなした。→違警罪即決例警察犯処罰令

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「違警罪」の意味・わかりやすい解説

違警罪
いけいざい

日本における 1882年1月1日施行の旧刑法が採用する,重罪,軽罪と並ぶ犯罪区分の一つ。この区分はまた,フランス刑法を継受したものと考えられる。旧刑法第4編 425~429条にわたって 71の処罰項目が規定されているほか,430条には,各地方の便宜により同罪を定めることを許容する旨が示されていた。本罪に該当する者は,拘留または科料に処せられた。 (→違警罪即決例 )  

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世界大百科事典(旧版)内の違警罪の言及

【重罪・軽罪】より

…犯罪をその罪質の軽重により区分した分類。歴史的には,イギリスのコモン・ローのように,殺人,強姦,強盗,窃盗,放火等の――死刑等の重刑にあたる――主要な自然犯を重罪とし,それ以外の罪を軽罪とする法制もあったが,今日では,一定の刑期(例えば,アメリカの多くの地域やドイツでは1年,フランスでは5年)以上の拘禁刑にあたるか否かを基準に,一律にこれを区分するのが通常である(なお,フランスでは,この両者に〈違警罪contravention〉という最下位の範疇を加えた三分法が用いられている)。 この分類の意義は,重罪・軽罪(または違警罪)のいずれに属するかにより,実体法上の取扱いや効果に一定の差異が認められること(例えば,ドイツやフランスでは,重罪については未遂もつねに可罰的とされ,また,重罪での刑の言渡しは当然に公権剝奪の効果を伴う)に加え,管轄裁判所や訴訟手続上の方式・要件などがはっきりと異なる(例えば,フランスでは,重罪事件を公判に付するためには,2段階の予審手続を経ることが必要であり,また,アメリカの多くの地域でも,重罪の起訴は必ず大陪審の決定によらなければならない)という点にある。…

※「違警罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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