日本大百科全書(ニッポニカ) 「違警罪即決例」の意味・わかりやすい解説
違警罪即決例
いけいざいそっけつれい
1885年(明治18)太政官(だじょうかん)布告31号による違警罪に関する特別手続。旧刑法(明治13年公布)には重罪、軽罪、違警罪の区別があり、違警罪とは拘留または科料の刑にあたる罪である(旧刑法1条)。なお、現行刑法(明治40年法律第45号)ではこれらの区別そのものは廃止されたが、刑法施行法(明治41年法律第29号)により、拘留または科料にあたる罪(警察犯処罰令の罪など)は違警罪とみなされた(同法31条)。
この違警罪につき、違警罪即決例は、警察署長またはその代理の官吏に、その管轄内で犯された罪を正式の裁判によらず即決処分により処罰しうることを認めた。ただ、この即決処分に対して、本人のほかその法定代理人・保佐人または配偶者も、本人とは独立して当該警察署に申立書を差し出せば、区裁判所の正式裁判を受ける道が開かれていた。この正式裁判の請求がない場合には、即決処分は確定し、確定判決と同一の効果を生ずるものとされた。違警罪即決例は、司法官ではなく行政官に違警罪の即決を認めることにより、思想犯対策としてしばしば濫用(らんよう)される結果となった。第二次世界大戦後、裁判所法施行法(昭和22年法律第60号)により廃止された。
[名和鐵郎]