遺伝性疾患の歯周症状

六訂版 家庭医学大全科 「遺伝性疾患の歯周症状」の解説

遺伝性疾患の歯周症状
(歯と歯肉の病気)

ダウン症候群

 常染色体(じょうせんしょくたい)の第21番染色体のトリソミー(過剰)によって、特異顔貌(とくいがんぼう)、精神運動発達遅滞(ちたい)多発奇形(たはつきけい)を示す病気です。

 新生児1000人に1人の頻度で発症し、90~95%が標準トリソミー型、5%が転座型(てんざがた)の染色体異常といわれています。丸い扁平(へんぺい)な顔、鼻根部が扁平、下あごが小さい、舌が大きい、口唇裂(こうしんれつ)口蓋裂(こうがいれつ)がみられることもあります。

 歯周組織は、炎症を起こしていることが多く、その原因として、プラーク歯垢(しこう))、歯並びや噛み合わせの異常などに加えて、体を守る白血球機能の異常、精神発達遅滞による口腔清掃の不良などをあげることができます。心室中隔欠損(しんしつちゅうかくけっそん)などの心奇形が約半数にみられ、消化管奇形も20%の症例に合併するといわれています。

パピヨン・ルフェーブル症候群

 100万~400万人に1人という頻度で発症するまれな病気です。血族結婚家系に発症しやすいことから、遺伝性疾患と考えられています。

 手のひらや足の裏がざらざらして硬くなり、重症になるとひび割れを起こします。乳歯永久歯の歯周組織が壊され、早期に歯が抜けます。手足の角化は2歳ころから始まりますが、乳歯の発育や生え方に異常はありません。乳歯の歯周組織は、歯が生えるとすぐに炎症が起こって壊れ始め、4歳ころには乳歯は抜けてしまいます(通常の乳歯の生え変わりは6歳ころ)。

 その後、歯肉の炎症は治まりますが、永久歯が生えてくると、また歯周組織が壊され、多くは12~16歳ころまでに永久歯も抜けてしまいます。原因はよくわからず、治療は極めて困難です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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