改訂新版 世界大百科事典 「重力変化」の意味・わかりやすい解説
重力変化 (じゅうりょくへんか)
gravitational differentiation
一般に重力値は地球上で観測される諸量のうちで最も恒常性の高い物理量であるとみなされているが,詳しくみると時間的に変動している。重力の潮汐変動はよく知られている現象であるが,そのほかに永年的な変動もあることが推定されている。その原因として,(1)万有引力定数の変化,(2)地球の形状,質量,自転速度の変動,(3)大局的な地球質量分布の変動,(4)地表付近での質量分布の変動,が考えられ,(4)には大気大循環,降水,地下水の移動,氷河の移動および融氷など気・水圏由来のものと,地震火山活動,浸食・堆積,圧密,地殻変動など岩圏由来のものが考えられる。最近,超伝導重力計を用いて極運動に由来する重力変化を検出したという報告がなされた。また,図1は地下水位の変動に関連した重力変化の観測例である。東京・柿岡間の重力差の変動は,東京の測定点に作用する地下水の引力の変動として説明できる。図2は伊豆半島東岸地域の地殻変動とそれに関連した重力変化で,地殻の上下変動量と重力変化量の間の関係は地殻の水平方向の圧縮に応ずる隆起運動の際に予想されるものではなく,地殻が単に膨張した際に現れるであろう様相を示している。このような地殻変動に伴う重力変化はそのほか二,三の地域でも検出されていて,地殻現象の研究の一つの有力な手段となっている。
執筆者:村田 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報