金属の硬さ(読み)きんぞくのかたさ(英語表記)hardness of metal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金属の硬さ」の意味・わかりやすい解説

金属の硬さ
きんぞくのかたさ
hardness of metal

硬さというのはわかりにくい性質で,たとえば金属ゴムでは硬さの比べようがない。よく知られた滑石1,ダイヤモンド 10とする 10段階のモースの硬さは鉱物学で使われ (→モースの硬度 ) ,ひっかき硬さの一種であるが,定量的でないので工学では使わない。それで金属の硬さの測定は,多分に便宜的であるが次の諸法による。 (1) はね返り硬さ ショア硬さ HS が代表的で,一定重量の鋼製ハンマを試験面に落し,はね返り高さではかる。 (2) ひっかきまたは切削硬さ 試験面上の特殊鋼またはダイヤモンド錐に荷重し,これを引いてできる条痕の深さまたは幅ではかるか,または回転して一定深さの孔ができるまでの回転数ではかる。マルテンスその他諸種の測定機があるが,あまり使われない。 (3) 押込み硬さ 最も標準的,一般的で,ブリネル硬さ HBビッカース硬さ HVロックウェル硬さ HR が代表的。特殊な場合はヌープ硬さ HK も使われる。鋼球またはダイヤモンド錐に荷重して試験面を押し,生じた圧痕の深さまたは径をはかる。これらはすべて異質の方法で,(1) は弾性変形抵抗,(2) は切削抵抗,(3) は塑性変形抵抗をそれぞれはかるわけである。ただ金属材料に関しては,これらの諸性質がほぼ平行関係にあることが経験的に知られているので利用される。ただし同一材料でも測定方法が違うと異なった硬さ値になる不便さがある。たとえば,焼入れられた硬い鋼は,HS 66.3,HRC 50,HRA 75.8,HV 51.5,HB 484となる。また高温硬さ測定には本多=佐藤式の高温硬度計 (一種のはね返り硬度計) ,ビッカース型の微小高温硬度計などがある。ゴムのような弾性体では上記の方法では硬さ値が無限大に近い値になるので使われず,試験面にあてがった細い針先に荷重して,針の入る深さと荷重の関係から硬さを出す方法がとられる。

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