ビッカース硬さ(読み)びっかーすかたさ(英語表記)Vickers hardness

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビッカース硬さ」の意味・わかりやすい解説

ビッカース硬さ
びっかーすかたさ
Vickers hardness

工業材料の硬さを表す尺度の一つで、押込み硬さの一種単位はHVで表し、DPH(diamond pyramid hardness)ともいう。この硬さ試験法は、1921年にイギリスの技術者であるスミスRobert L. SmithおよびサンドランドGeorge E. Sandlandらによって考案された。対面角136度の正四角錐(すい)ダイヤモンド圧子を静かに材料表面に押し込んでくぼみをつくり、荷重を除いたあとに残った永久くぼみの対角線の長さから表面積を算出し、荷重をこの面積で除した商で表す。真上から見た永久くぼみの対角線の長さをdミリメートル(mm)、荷重をF重量キログラム(kgf)とすると、ビッカース硬さHVは以下のように表すことができる。


 くぼみが相似形となるのが特徴で、試験荷重の大小にかかわらず、ほぼ一定の硬さの値が得られ、硬さの異なる種々の工業材料に対しても、荷重を変更するだけで同一の尺度で硬さが求められ、相互の比較ができる。くぼみの輪郭がきわめて明瞭(めいりょう)なので、荷重を小さくしても測定精度が高く、製品表面や金属組織各部分の硬さを測定することもできる。荷重1キログラム以下で使用される試験機をとくに微小ビッカース硬さ試験機(あるいはマイクロビッカース硬さ試験機)とよぶ。

[林 邦夫・中條祐一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビッカース硬さ」の意味・わかりやすい解説

ビッカース硬さ
ビッカースかたさ
Vickers hardness

おもに金属試料の硬さを表わす量の一つで,ビッカース試験機 (イギリスのビッカース=アームストロング社製品が原型) によって測定する。正四角錐形のダイヤモンド圧子 (対面角α=136゜) で試料表面にピラミッド形の永久くぼみをつくり,そのとき加えた試験荷重 Pkgf (P=0.3~50) と2本のくぼみの対角線の長さの平均値 d とから,HV=0.102×2P sin (α/2)/d2 に従って算出する。単位は通常つけない。表示にあたっては,試験荷重の値を明記する必要がある場合には,HV(30)250 のように ( ) 内に表わす。 250はビッカース硬さを示す。

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