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金属材料(読み)きんぞくざいりょう

改訂新版 世界大百科事典 「金属材料」の意味・わかりやすい解説

金属材料 (きんぞくざいりょう)

金属という性質をもち,実用に供される材料。人類の使用している材料の大きな部分を占めている。われわれの身のまわりをみても,鋼やアルミニウム合金などさまざまの金属材料が,有機高分子材料,セラミックス材料,ガラス,木材コンクリートなどと役割を分担して,多量に使用されているのがわかる。

金属の原料はふつうは地中から採掘される鉱石であって,これらは主として金属の酸化物や硫化物などの化合物である。これを製錬して金属を分離するが,その後,実用材料となるまでには長い加工工程を経る必要がある。最も消費量の多いものは鋼であるが,これは製鉄所で巨大な設備を使用して多量生産されており,それによってコストの低下を図っている。実用材料の種類は多いが,生産量と価格は資源制約と製造の難易によって大幅に異なっている。一般的な用途には鋼,アルミニウム合金銅合金など比較的少数のものが使用されている一方,特殊用途のものとしてはきわめて多種の金属材料が用いられている。工業用の純金属にはいくらかの不純物が含まれているのがふつうである。これには原料に混入されているもの,製造工程で入ってくるものがある。不純物をどれだけ許すかは使用目的によって異なる。またその不純物がどのくらい害を及ぼすか,あるいは不純物を除去するのにどのくらいのコストが必要であるか,などによっても変わってくる。電子機器関係への利用などでとくに不純物をきらう場合には,十分に精製するが,そのために高純度金属はふつう高価となる。

金属材料の特徴は,他の元素を添加して合金とすることによってさまざまの性質をもたせることができることである。添加元素は金属元素であったり,非金属元素であったりする。鋼は鉄を主体とし,炭素をおもな添加元素とする炭素鋼であるが,炭素量をたとえば0.1%から2%まで変えると強さなどの性質が大幅に変化する。さらにこの性質を改良するために,いろいろの元素を添加した特殊鋼合金鋼)がつくられる。このような合金化による性質の改良は金属材料全体を通じて利用されている。金属材料の評価はそれが使用中にどのような性能を示すかによるが,ここで重要なことは,その性能が使用形態までの製造履歴と使用中の環境の影響を受けることである。その理由は,これらの影響によって材料の内部の構造(金属組織)が変化し,それに伴って性質が変化するためである。この変化はとくに合金にしたときに顕著である。つまり合金の性質は単に成分で決まるのではなく加工履歴によるからである。金属材料の一部分は鋳物として使用されている。鋳物は複雑な形状のものを比較的安価につくることができるという特徴があるが,一般論として,金属を溶かして固めたままでは成分の不均一があったり組織が粗大であったりして性質がよくない。そこで鋳物の製造では,溶解と鋳込みの方法,鋳型の設計,凝固後の熱処理にくふうをこらして品質の向上が図られている(鋳造)。一方,金属材料の大きな部分は,板,線,棒,管,形材などの一次製品に加工され,それを入手した利用者はさらに二次加工を加えて機械や構造物をつくっている。一次製品の製造においても,ただ寸法形状を仕上げているのではなく,溶解から造塊の条件,鍛造や圧延などの加工中の変形その他の条件,熱処理の条件などを制御し,金属組織を調整して金属の優れた特性を引き出すようにしている。二次加工では鍛造,プレス加工,切削加工,熱処理,溶接などの方法が利用されるが,ここでも加工条件を制御して最終製品が所期の性質をもつようにしている。また,供用期間中にも,とくに安全性が要求される用途の場合には定期検査を行い材料の劣化を調べながら使用している。

金属材料はおおざっぱに構造材と機能材に分けられる。構造材は機械・器具,構造物などの主体構造となり,それに使用中に作用する荷重に耐え,それが所期の性能を示すように形状を維持する。このときにはとくに,強さと粘さ,耐環境性,加工性と価格が問題となり,金属材料はこれらのバランスがよいことに特徴がある。強さは耐えることのできる単位面積当りの荷重で表される。したがって,強い材料を使用すれば部材の断面積を小さくでき,自重が小さくなることになり,構造物には高張力鋼が使用される。また,密度が小さく強い材料を選べばさらに軽くできることになり,航空機には高強度のアルミニウム合金やチタン合金が使用される。構造材は強さだけでなく,粘さが必要であり,これを兼ねそなえているのが金属材料の特徴であるが,条件によっては脆性(ぜいせい)を示すものがあり,材料の選択と加工に注意が払われている。構造材には使用中の化学的環境に対する耐環境性も要求される。鋼は一般に大気環境中で容易に腐食され,防食が必要となる。アルミニウム合金には耐候性のよいものがあり,建築用材としても重要である。海水,その他種々の化学物質に対する耐食性は金属材料によって大幅に異なるので,使用環境に応じた材料の選択が必要であり,とくに耐食性を重視した耐食合金がある。金属はまた一般に耐熱性に優れているのも特徴の一つで,とくに高温強度や高温での耐酸化性を重視した耐熱合金もある。

 材料にはしばしば複合的な性能をもたせることがある。耐食性や美観は表面の性質によるが,これを改良するために,めっき,肉盛溶接,合せ材(クラッド材)などによって表面に目的に合う材料を付けて母材の性質を補うことがある。また,鋼の表面層だけ炭素量を多くして表面が硬く中が粘い部材をつくる方法(浸炭)もある。また,異種の金属や化合物の繊維や粒子を金属の内部に分散させ,分散しているものと母材との性質を兼ねそなえる複合金属材料とすることもある。多くの金属材料は溶解してつくられるが,とくに高融点であるものや高硬度のものには粉末を加圧成形したのち,高温で焼結して製造するものもある(粉末冶金)。

 機能材は最近とくに注目されている分野である。構造材も荷重を支えるという機能を果たす機能材であるが,とくにエネルギーや情報の変換という機能に注目して分類することが多い。またこの場合には単に素材を入手して組み立てるのではなく,ある機能をもった機能素子という複合体がさまざまの材料学的手法によってつくり出されており,そこでは金属や半導体がいっしょになって目的の機能を果たすように総動員されている。

 次に金属の果たす役割のいくつかをあげる。金属の特徴の一つは電気の良導体であることであって,送電線から小さな電子素子にいたるまで導電の役目を果たす用途に使われている。また,合金化することにより電気抵抗を高め,電気抵抗素子や電熱材料としても使用される。超電導材料,電気・電子機器の電気接点材料としても重要である。ばね特性のよいことを利用して各種のばね材にも用いられる。異種の金属の接合点では温度に応じた起電力を発生する。これを利用して温度測定用の熱電対とされる。磁気的性質を示す材料をつくり出すこともでき,発電から小さな電子素子にいたる広範囲で活躍している。また化学工業の優れた触媒となるものもある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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