鉱物学(読み)コウブツガク(その他表記)mineralogy

翻訳|mineralogy

デジタル大辞泉 「鉱物学」の意味・読み・例文・類語

こうぶつ‐がく〔クワウブツ‐〕【鉱物学】

鉱物性質・形態・内部構造・成因などを研究する学問

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精選版 日本国語大辞典 「鉱物学」の意味・読み・例文・類語

こうぶつ‐がくクヮウブツ‥【鉱物学】

  1. 〘 名詞 〙 鉱物の産出状態、形、物理的性質、化学組成、成因などを研究し、また、多種の鉱物を、一つの系統の下に整理、分類する学問。〔具氏博物学(1876‐77)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉱物学」の意味・わかりやすい解説

鉱物学
こうぶつがく
mineralogy

鉱物を研究対象とする自然科学の一部門。今日では、鉱物のみならず、これに関連する物質を取り扱うところまで範囲が広がっている。したがって、宇宙および地球科学の一部門であるかたわら、物理学化学結晶学などの物質科学的な要素を含み、とくに結晶学とはもっとも密接な関係にある。そのために、鉱物学の細分にあたっては、それと並行して結晶学の細分も紹介されることが多い。すなわち、結晶学の細分として、結晶幾何学、結晶化学、結晶物理学、鉱物学の細分として、鉱物化学、鉱物成因論、鉱物分類学、応用鉱物学、鉱物記載といったものがあげられ、これらが広義の鉱物学の内訳である。もちろん研究者によってこれらの内容は多少異なる。

 結晶幾何学とは、結晶における規則性、対称などを取り扱い、結晶化学とは、結晶を構成する原子の特性、結合様式、配列上の規則性のほか相平衡、結晶生長、結晶の生成融解や溶解現象に関する事項を取り扱う。結晶物理学とは、結晶の物理的特性、諸性質、結晶光学などが対象となる。鉱物化学とは、鉱物を地質現象の化学的産物である化学物質とみなして取り扱うものであり、鉱物成因論は、その名のとおり、鉱物の生成に重点を置いて、その条件や生成機構を究明するものである。鉱物分類学は、鉱物を共通する性質に従って区分し、さらにその一小部門である鉱物系統分類学は、この区分を繰り返して最後の単位を鉱物種となるよう、鉱物全体を系統的に配列するものであり、その過程や方法に関する事項をも対象とする。応用鉱物学は、鉱物の有効利用に関する事項が対象となり、鉱床学がその一部に含められることもある。宝石学とも密接な関係がある。鉱物記載には、鉱物学そのものとは切り離す取り扱い方と、鉱物学に含めるものとがある。

 鉱物学を学問的に確立した最初の学者は、フランスのアウイであるとされている。同時代のドイツのA・G・ウェルナーは、鉱物学を地質学から独立させた。19世紀に入ると、ドイツのワイスC. S. Weiss(1780―1856)やイギリスのW・H・ミラーは、結晶面指数の概念を確立した。一方、アメリカのJ・D・デーナは、初めて全鉱物の記載および分類を取り扱った著書を著した。こうした人々の業績が基礎となって、鉱物学が発達し、分化したということができる。

[加藤 昭 2016年8月19日]

『森本信男著『造岩鉱物学』(1989・東京大学出版会)』『松井義人・坂野昇平編『岩石・鉱物の地球化学』(1992・岩波書店)』『地学団体研究会編『新版地学教育講座3 鉱物の科学』(1995・東海大学出版会)』『秋月瑞彦著『鉱物学概論――形態と組織』(1998・裳華房)』『堀秀道著『楽しい鉱物学――基礎知識から鑑定まで』新装版(1999・草思社)』『森本信男・砂川一郎著『鉱物学』(2013・岩波書店)』『藤野清志著『結晶学・鉱物学』(2015・共立出版)』『砂川一郎著『新しい鉱物学――結晶学から地球学へ』(講談社ブルーバックス)』

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改訂新版 世界大百科事典 「鉱物学」の意味・わかりやすい解説

鉱物学 (こうぶつがく)
mineralogy

鉱物の諸性質を科学的に明らかにすること,およびその成因を観察研究し,さらにその分類などを行う学問である。その歴史は古代ギリシア時代にさかのぼることもできるが,鉱物が自然科学的に研究されだしたのは16世紀のことである。G.アグリコラは,鉱物をその色,硬さ,重さなどから分類したほか,当時の採鉱冶金技術をまとめた《デ・レ・メタリカ》を著すなど,先駆的な業績をあげた。鉱物学の内容は,鉱物の規則正しい外形の研究に始まる結晶学,結晶形態学,次いでX線の発見に伴って発展した結晶構造学,鉱物の光学性を解明し,光学性を鉱物種の決定に利用する鉱物光学を中心とした鉱物物理学,さらに鉱物の化学分析とその化学性を明らかにする鉱物化学などである。また自然界における鉱物の存在状態を明らかにして鉱物の生成を研究する鉱物成因論,またその安定範囲,変態状態などを検討する物理化学,熱力学部門も存在する。天然に産出する鉱物種は3500種をこえ,その化学組成と結晶構造により分類記載が行われるが,それらは鉱物学の分野として重要な部分である記載鉱物学の分野を占める。鉱物はまた重要な天然資源の一つであって,金属原料,非金属原料として人類の生活文化に貢献している。そのほかにもルビーなどの結晶を精密機械の軸受などに使用し,また古くより宝石としても利用されているが,これらは人工鉱物をも含めて広く応用鉱物学の分野において研究されている。またこれらの研究法は人工物についても適用されるものであり,それは人工鉱物学または人造鉱物学の分野を形成する。
結晶学 →鉱物
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鉱物学」の意味・わかりやすい解説

鉱物学
こうぶつがく
mineralogy

鉱物を研究対象とする科学。地学分野での重要な基礎科学で,鉱物の物理的・化学的・結晶学的性質や,成因,用途などを研究する。研究方向により,形態および内部構造を研究する結晶学,物理的性質を研究する鉱物物理学または結晶物理学,結晶の内部構造と化学的性質の関係を研究する結晶化学,鉱物に適用される化学の一般法則を研究する鉱物化学,鉱物の諸性質を記載分類する鉱物鑑定学または鉱物各論,利用法などを研究する応用鉱物学などに分類される。鉱物の相転移などの動的現象を追跡する動態結晶学または動的鉱物学,鉱物の熱力学的関数の測定などを行う熱鉱物学,天然における生成条件や生成後の変化などを研究する環境鉱物学などの分野も開拓されつつある。

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百科事典マイペディア 「鉱物学」の意味・わかりやすい解説

鉱物学【こうぶつがく】

鉱物を研究する学問。結晶の外形・構造を研究する結晶形態学・X線結晶学,色・光沢・条痕(じょうこん)・屈折率・比重・へき開・断口・硬度等の物理的性質を調べる鉱物物理学,化学組成を調べる鉱物化学,鉱物の成因・変化の研究,分類と各鉱物種の研究,鉱物の応用など多くの部門があり,結晶学・物理学・化学・地質学・材料工学等と密接な関連をもつ。

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